この記事を監修したのは
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士
遠藤 哉
既にご存じの方も多いと思いますが、介護保険には要支援1・2と要介護1~5という7段階の認定区分があります。認定区分の違いによって、利用できるサービスや、保険適用となる限度額が設定されます。
「要支援の認定でも住宅改修は使えるの?」という質問もよく伺います。例えば以下のような質問です。
手すりの工事をしてもらおうと思って、介護保険の申請をしたら「要支援2」の認定だった。要介護の認定になると思っていたけれど、思っていたより低くて。
要支援でも住宅改修は使えるの?使える金額が少なくなったりすることはないの?
という質問をいただいています。
介護リフォーム本舗のフランチャイズ本部、株式会社ユニバーサルスペースの遠藤哉社長から回答します。
要支援の認定でも住宅改修はできます。要介護でも要支援でも、介護度の違いはありません。上限額や保険対象の工事内容も同じです。
要支援認定の方も大変多く、転倒予防のためにも大きな効果につながっています。
要支援の方が住宅改修を行う際に注意する部分などについて解説していきます。
【この記事を読んでほしい人】
- 介護認定で要支援の認定を受けたご本人及びご家族
- 住宅改修をこれから考えているご本人及びご家族
【この記事に書いてあること】
- 要支援でも住宅改修はできる。要介護度での差はない。
- 住宅改修の総件数のうち、40%は要支援の方
- 転倒予防のための効果的な提案
要支援と要介護の違い
要介護度の違いによって利用できるサービスが異なる
先程もお伝えした通り、介護保険の認定は要支援1・2と要介護1~5という7つの区分に分かれます。単純に要支援1はどう、要介護1はどう、ということはできません。疾患や状態像もまったく異なるため、単純に表現することは困難です。簡単な早わかり表を用意していますが、参考程度に見ていただければと思います。
非該当 | 自立できている状態。介護保険サービスの利用はできないが、市区町村の介護予防・日常生活支援総合事業が利用できる |
要支援1 | 最も軽度な認定区分。家事や身の回りの日常生活動作に支障はないものの、将来介護状態になる可能性があり、見守りやサポートを必要とする。介護予防サービスや市区町村の介護予防・日常生活支援総合事業が利用できる |
要支援2 | 家事や身の回りの日常生活動作に支障はないものの、要支援1よりも困難さが多く、支援の手間が増えている。将来介護状態になる可能性があり、見守りやサポートを必要とする。介護予防サービスや市区町村の介護予防・日常生活支援総合事業が利用できる |
要介護1 | 介護にかかる手間・時間は要支援2と変わらないものの、認知症や状態が変動しやすい不安定な状況。 入浴や外出などの身の回りの部分にも部分的に介護が必要な状態。介護保険の介護サービスが利用できる |
要介護2 | 介護にかかる手間が増えている状態。 食事や入浴、排泄などの身の回りの部分にも介護が必要な状態。介護保険の介護サービスが利用できる |
要介護3 | 介護にかかる手間がより増えている状態。 食事や入浴、排泄などの身の回りの部分にも頻繁に介護が必要な状態。介護保険の介護サービスが利用できる |
要介護4 | 介護にかかる手間が多い。 食事や入浴、排泄などの身の回りの部分にも常時、介護が必要な状態。介護保険の介護サービスが利用できる |
要介護5 | 最も介護にかかる手間が多い状態。 食事や入浴、排せつなどの身の回りの部分にも常時、負担の大きな介護が必要。 介護保険の介護サービスが利用できる。 |
認定区分は、認定調査の結果と主治医の作成する意見書という書類をもとに、役所で行われる介護認定審査会によって決定します。最も重要な要素は、「介護にかかる手間」がどのくらいあるかというものです。介護の手間がかかる方ほど、介護度が高くなる(要介護5に近づく)仕組みになっています。
介護保険の認定によって利用できるサービスの限度額も異なります。要介護5の人の方がより多くのサービスを利用できます。
また、サービスの内容も異なります。例えば、福祉用具であれば、要介護2以上でなければ介護用電動ベッドのレンタルができない、など利用できる内容にも違いがあるのです。施設入所に関しても、特別養護老人ホームの対象は原則要介護3以上の認定となっています。
介護度による違いなどについて、詳しくは担当ケアマネジャーさんや地域包括支援センターに相談してみてください。こちらの記事も参考になるかと思います。
要支援と要介護で使えるサービスは異なる
要介護度が要支援1・2となると、利用できるサービスの範囲もぐっと狭まります。
訪問介護やデイサービスといったサービスも利用できますが、介護保険制度ではなく、市町村による総合事業という枠組みの中で提供されます。利用回数なども制限されます。
他にも、看護小規模多機能や定期巡回随時対応型訪問介護看護、グループホーム(要支援2であれば利用可能)などのサービス利用はできません。
要支援の認定は「介護予防」サービスと位置付けられ、予防に重点を置かれたサービス利用が中心となります。そのため、要支援の認定で使えるサービスは限定されています。
要支援での住宅改修
要支援認定者の住宅改修が全体の40%
住宅改修に関しては要支援・要介護の区分は関係なく、20万円の上限額が利用可能です。
住宅改修は転倒防止という意味で、予防のために行う方も多いため、要支援の方の利用が多いです。
令和4年度の介護度別の住宅改修の実施件数をみると、要支援の方対象の工事が多いことがわかります。
介護度 | 要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | 合計 |
件数 | 87,358 | 86,671 | 95,277 | 73,746 | 43,725 | 29,923 | 9,271 | 425,971 |
これを見てのとおり、要支援の方の住宅改修の件数は非常に多いです。
要支援1・2の方の件数は、住宅改修件数全体のおよそ40%を占めています。
要支援のうちに住宅改修を行うメリット
要支援の方の住宅改修にはいくつかのメリットがあります。
介護予防を目的とした住環境改善:
要支援者はまだ比較的自立しているため、早期の住宅改修が将来的な事故・介護におけるリスクを減らす効果があります。転倒や転落などの事故が起きると、一般的に高齢者は骨密度も低く、骨折につながる可能性が非常に高いです。事故を起こしてからではなく、事故を起こす前に住宅改修をすることが重要です。早いうちに住宅改修をすることで、未然に事故を防ぐ可能性が増えます。
3段階リセットが活用しやすくなる:
住宅改修には3段階リセットという制度があり、介護度が3段階上がった場合、20万円の限度額がリセットされます。そのため、軽度な認定の段階で住宅改修をした方がリセットを活用できる可能性が高まります。要支援1で住宅改修1回目をしたAさんは、要介護3になれば20万円分の枠が復活し住宅改修ができます。しかし、要介護2で1回目ので住宅改修をしたBさんは要介護5にならないと20万円の枠が復活しません。そのため、要支援のうちに住宅改修をすることで、もう一度介護保険を使って住宅改修をする可能性が増えます。
メリットもさることながら、日本の介護・医療の関係者には、サービスを過剰に導入するよりもまず生活環境から改善を目指すことへの意識が高いという側面もあります。コスト意識も高いため、コストパフォーマンスにも優れる住宅改修を早期に導入するパターンが多いことも特徴です。
要支援の方の住宅改修、おすすめの工事内容は
要支援の方が住宅改修する場合のおすすめの工事内容を紹介します。
手すりの取付け
住宅改修・介護リフォームで最も多いのが手すりの取付けです。コストも安く、負担軽減や転倒予防の効果が高いことから、手すりの工事が最もポピュラーです。
要支援の方の住宅改修では手すりの取付け工事が圧倒的に多いです。要介護度が高ければ、車いすで移動するための段差解消スロープ工事や、車いすでも移動しやすいような床面の張り替えなど、規模の大きい工事も増えます。しかし、要支援の方の場合は歩いて移動する力がある方が多く、その能力を補助するための手すりを取り付けることで自立支援ができます。
立ち座りや段差昇降、またぎ動作など、上下の移動が必要になる場所では特に設置をお勧めします。
トイレ・浴室・階段・玄関などに手すりがついていなければ、手すりをつけることを考えましょう。手すりをつける場所がない、という場合でも解決する方法はあります。住宅改修ではなく、福祉用具で解決することも可能です。
まずは相談してみましょう。
危険性が高い場所は早めに住宅改修を
今は何とか大丈夫・・・と思っていても、動作時に負担が大きい場所や、転倒のリスクが高い場所はあります。実際の動作を見てもらい、リスクが高いと思われる場所は早めに住宅改修をすることをお勧めします。
長く自宅で生活したいと思う方はなおさらです。
住宅改修を複数回に分けて行うこともできます。しかし、いずれ工事をするのであれば、何度も見積もりや工事をしてもらうよりも、一度にやってもらった方が費用も安く済みます。
危険性の高い場所は早めに環境の改善をしておきましょう。特に階段や浴室は重大な事故につながりやすいので、優先順位を高めに検討しましょう。
専門家に相談を
どこにどのように手すりをつけるか、専門家に相談することが重要です。現在の状態や疾患などによって、今後起こりうるリスクなども含めて、客観的・専門的に検討することができます。
ただ、要支援の方の場合はケアマネジャーが担当についていない場合も多いです。地域包括支援センターに相談し、最適なプランを考えてもらうことをお勧めします。ケアマネジャーがいなくても住宅改修は利用できますので、相談する方がいなければまずは地域包括支援センターに相談しましょう。
また、介護リフォーム本舗は、介護リフォームの専門業者として、多くの経験と実績を持っていますので、御利用者様の状況を踏まえて提案することが可能です。
お近くの介護リフォーム本舗の店舗宛にぜひご相談いただければと思います。
この記事を監修したのは
遠藤 哉
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
資格:一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士
大手ハウスメーカーを経て、2009年に株式会社ユニバーサルスペースを創業。介護リフォームに特化し、「介護リフォーム本舗」として全国100店舗超を展開している。チェーン全体での介護リフォームの累積工事件数は約120,000件を超える。