住宅改修の3段階リセット!支給額が復活する条件と例外を詳しく解説

住宅改修3段階リセットで限度額20万円が復活する? 住宅改修
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

遠藤 哉

介護保険の住宅改修には20万円という限度額があります。この限度額を超えた費用は全額実費になります。被保険者ひとり20万円という限度額は基本的には復活することはありません。

ただし、限度額が復活する例外もあります。その代表的なパターンが3段階リセットと呼ばれるものです。

このような質問をいただいています。

ご家族
ご家族

要支援1の時に20万円分の住宅改修をしていただきました。今回、介護認定が更新されて要介護2になりました。介護度が3段階上がれば住宅改修をできる限度額の20万円が復活すると聞きました。
住宅改修をまたお願いしたいのですが、介護保険でまた利用できるのでしょうか?

<span class="fz-12px">株式会社ユニバーサルスペース</span><br><span class="fz-12px">遠藤哉</span>社長
株式会社ユニバーサルスペース
遠藤哉社長

ご相談ありがとうございます。

住宅改修の制度には3段階のリセット制度があります。ただし、このルールが複雑で、要支援1からの3段階は要介護2以上ではなく、要介護3以上になります。

なので、今回の場合は3段階リセットの対象外となります。

本記事では住宅改修の3段階リセットについて、適用条件と例外も含めて解説します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 介護度が上がったのでもう一度介護保険を使って住宅改修をできるか知りたい利用者・家族
  • 介護度が上がったが、条件に該当するか確認したいケアマネジャー
  • 住宅改修3段階リセットについて詳しく知りたい福祉用具専門相談員や住宅改修担当者

【この記事に書いてあること】

  • 住宅改修の3段階リセットの概要、該当するパターン例
  • 3段階リセットの例外・適用されないパターン

住宅改修における3段階リセットの概要とパターン例

住宅改修の3段階リセットとは

住宅改修3段階リセット

住宅改修における「3段階リセット」とは、介護保険を利用した住宅改修費を再度支給可能にする制度で、要介護度が3段階上昇した場合に適用されます。

介護保険の住宅改修費は上限20万円です。住宅改修によって使い切った20万円分の限度額は、どれだけ時間がたっても復活することはありません。ただし、要介護度が3段階上がることで限度額がリセットされ、再び住宅改修費20万円の支給を受けることができます。例えば、要支援1から要介護3以上、要介護1から要介護4以上などのケースが対象です。

介護度の上昇によって自動的に適用されるため、特別な手続きなどは必要ありません。

3段階リセットによる住宅改修がもたらす効果

住宅改修の提案をする介護リフォーム女性スタッフ

住宅改修費の3段階リセットは、介護状態が大幅に悪化した際に、住環境を適した形に改修するための重要な支援策です。

要支援などの軽度な状態の時には、トイレや浴室の手すりを取り付けることで、足の筋力低下を補う用途や、段差や立ち座りなどの際に膝や腰にかかる負担を軽減する、またはリスクの高い場面での転倒防止などを目的にするパターンが多いです。

その後、身体状況が悪化しても、3段階リセットの適用により、車いすでの移動にも適した住環境にすることができます。屋外の路面を平坦にすることや、段差をスロープにすること、車いすでも移動しやすいように畳をフローリングに変更するなどの工事にも適用されます。

※具体的な工事に関する情報は以下の記事をご参照ください。

身体状況によって、必要なリフォーム場所や内容は大きく変わります。ご本人の身体状況に合わせて、新たに住宅改修を行うことで、安全で快適な在宅生活の実現につながります。

3段階リセットが適用されるパターン

車椅子女性に介護リフォームの提案をする女性スタッフ

住宅改修の3段階リセットが適用されるパターン例を紹介します。

ここで注目してほしいのが要支援2と要介護1が同一のレベルで扱われることです。要介護状態区分を7段階で考えると、通常、要支援1から3段階上昇した介護度は要介護2(→要支援2→要介護1→要介護2)と思われるのではないでしょうか。
しかし、制度上、要支援2と要介護1は同じレベルとして扱われるため、要支援1からの3段階上昇は要介護3(→要支援2&要介護1→要介護2→要介護3)となります。

【補足説明】
なぜ要支援2と要介護1を同じ段階として扱うのかというと、もともと介護保険の認定区分は6段階だったからです。

要支援は1と2ではなく、要支援という1段階のみで、要介護1~5と合わせて6段階でした。介護保険制度の改定により、要介護1の区分を、状態が比較的安定している要支援2と、認知症など状態が急に変わる可能性の高い要介護1の2つに分けたことで、7段階に区分されました。

そのため、要支援2と要介護1はもともと同じレベルで、要介護認定の際に採用される要介護認定等基準時間(介護にかかる手間)も同じです。その状態を介護認定審査会で、要支援2と要介護1に振り分けているのです。

住宅改修の3段階リセットが適用されるパターンは以下の通りとなっています。

1回目の住宅改修3段階リセットの適用条件
要支援1要介護3・4・5
要支援2要介護4・5
要介護1要介護4・5
要介護2要介護5
要介護3・4・53段階リセットは適用されない

要支援1の段階で1回目の住宅改修をした場合、要介護3以上の認定になれば20万円分の限度額が復活します。要介護2で1回目の住宅改修をした場合は、要介護5にならなければ限度額は復活しません。

また、要介護3・4・5で1回目住宅改修をした方は、3段階以上上の要介護度がないため、3段階リセットの対象とはなりません。

車椅子で外出できるようになった高齢者と介助する女性

複数回に分けて住宅改修をした場合は?

複数回に分けて住宅改修をした場合について解説します。

要支援1の段階で10万円分の住宅改修を行い、その後、要介護2の認定になって10万円分の住宅改修を行った。この場合3段階リセットが適用されるのは要介護3からか、要介護5からか。どちらでしょう。

複数回に分けて住宅改修をする場合
  • 要支援1:1回目の住宅改修を実施[10万円]
  • 要介護認定更新で要介護度が要介護2に
  • 要介護2:2回目の住宅改修を実施[10万円]
  • 要介護認定更新で要介護度が要介護3に
  • 【要介護3:3回目の住宅改修・保険給付は認められる?】

正解は要介護3からです。1回目に行った住宅改修の要介護度を基準にリセットされる区分が決まります。つまり、要支援1のときに1回目の住宅改修を行っているので、要介護3になれば3段階リセットが適用され、20万円分の限度額が復活します。

残額があるときは残額に20万円が上乗せされるの?

では、限度額20万円のうち、10万円分をすでに使っていて、その後3段階リセットの条件が適用された場合、残額分(10万円)を合算し、限度額を30万円にすることができるのでしょうか。

具体例を紹介します。

残額があればリセット時に合算・上乗せされる?
  • 要支援1:1回目の住宅改修を実施[10万円]
  • 要介護認定更新で要介護度が要介護3に
  • 【要介護3:2回目の住宅改修を実施[30万円]・保険給付は認められる?】

限度額は合算はされません。10万円分の残額は合算されずに、リセット後はまた限度額20万円となります。限度額が20万円を超えることはありません。

具体的な3段階リセットの適用例を紹介しました。次の章ではさらに深く、3段階リセットが適用されない例外パターンも解説します。

3段階リセットが適用されないパターン

介護度が3段階上がれば無条件にリセットが適用されるのか、というとそうではありません。3段階リセットの適用にならないパターンもあります。3段階リセット対象外パターンを紹介します。

介護度が下がってまた上がった場合は適用されるか?

介護度が一度下がって、また上がった場合はどうなるか。以下のようなパターンです。

要介護2で住宅改修を実施。その後、一度要支援1の認定になってから、今度は要介護4に。要支援1から介護度が3段階上がっているので、住宅改修のリセットは適用できるのか。

要介護度が下がった場合
  • 要介護2:1回目の住宅改修を実施[20万円]
  • 要介護認定更新で要介護度が要支援1に
  • 要介護認定更新で要介護4に
  • 【要介護4:2回目の住宅改修・保険給付は認められる?】

この場合、3段階リセットは適用されません。

一度要介護度が下がったとしても、基準となるのは1回目の住宅改修を行ったときの要介護度です。1回目の住宅改修が要介護2の段階で行っていますので、3段階リセットが適用されるのは要介護5からとなります(要介護2から3段階上が要介護5)。
今回のケースで言うと、要介護4では3段階リセットの条件に該当しません。

2度目の3段階リセットは適用されるか?

3段階リセットが2度適用されることはあるのでしょうか。以下のようなパターンです。

要支援1の認定で20万円分の住宅改修を実施。その後、要介護3になったため、3段階リセットの適用を受けて2回目の住宅改修を実施。一度、要介護2になり、その後、要介護5に。3段階介護度が上がったので、もう一度リセットが適用されるのか。

3段階リセットの適用後、一度介護度が下がってまた3段階上がった場合
  • 要支援1:1回目の住宅改修を実施[20万円]
  • 要介護認定更新で要介護度が要介護3に
  • 要介護3:2回目の住宅改修を実施[20万円]
  • 要介護認定更新で要介護度が要介護2に
  • 要介護認定更新で要介護度が要介護5に
  • 【要介護5:3回目の住宅改修・保険給付は認められる?】

この場合も3段階リセットは適用されません。

3段階リセットが適用されるのは1人1回限りとされています。一度3段階リセットが適用された方は、3段階上がったとしても、それ以降のリセット適用を受けることはできません。

以上のように例外的な取り扱いもあるので注意しましょう。例外パターンを解説しました。

その他のリセット適用パターン

3段階リセット以外にも住宅改修費20万円の限度額がリセットされるパターンもあります。それが転居によるリセットです。転居した場合は、改めて住宅改修費の適用を受けることができます。このパターンは、転居リセットと呼ばれます。

こちらもまた改めて別の記事で解説します。

また、同居家族が要介護認定を受けている場合は、同居家族分で住宅改修の適用を受けることもできます。もちろん、同居家族も何らかの生活上の課題があり、住宅改修の必要性があることが条件となります。詳しくはこちらの記事(夫婦で住宅改修?二人分使えるの?)で解説しています。

まとめ

住宅改修の3段階リセットについて解説しました。

身体状況は変わります。状態が変わったときに、これまでの身体状況であれば適した住まいが、逆にリスクになる場合もあります。

今の状態に合った住まいにすることで、長く自宅での生活を続けていくことができます。3段階リセットについて、正しく理解し、上手に活用していきましょう。

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

遠藤 哉

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
資格:一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

大手ハウスメーカーを経て、2009年に株式会社ユニバーサルスペースを創業。介護リフォームに特化し、「介護リフォーム本舗」として全国100店舗超を展開している。チェーン全体での介護リフォームの累積工事件数は約120,000件を超える。