
この記事を監修したのは
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士
遠藤 哉
住宅改修ってどうやって進めるの?どのくらい時間がかかるの?

介護保険でトイレに手すりをつけてもらいたくてケアマネジャーさんに連絡したんだけど、手すりが取り付けられるまで、どのくらい時間がかかるのかしら。このあと、待っているだけでいいのかしら。心配になっちゃって。
今回は住宅改修の一般的な流れについて解説します。
【この記事を読んでほしい人】
- 住宅改修の相談をしようと思っているが、今後の流れを知りたい人
- 少しでも早く手すりを付けたいが、どのくらいの時間がかかるか知りたい人
- 住宅改修に詳しくなく、どのような流れで進めるか確認したい人
【この記事に書いてあること】
- 介護保険住宅改修の一般的な流れ
- 介護保険住宅改修にかかる日数
1. 相談

「トイレでの立ち座りがつらい。」
「お風呂の浴槽をまたぐのがこわい。」
「玄関の上がりかまちでつまづきそうになる。」
加齢、疾患や障害などの影響により、自宅の住環境で不安や課題に感じることは増えます。
そのような方の自宅での生活を助けるためにある制度が介護保険の住宅改修です。手すりの設置や段差解消などのリフォームを通して、住環境をより安全にすることができます。
介護保険住宅改修の制度概要についてはこちらの動画に紹介しています。
まずは相談から。
どんなことに困っているか、どんなことが大変なのか、具体的な課題について相談しましょう。
担当のケアマネジャーがいる場合は担当のケアマネジャーさんにまずは相談しましょう。要支援の方は担当の地域包括支援センターの職員に相談してください。
介護保険のサービスをまだ利用していない、担当のケアマネジャーがいないという場合は、担当地区の地域包括支援センターにまずは相談いただければと思います。詳細はこちらの記事をご参照ください。
また、相談する際には以下の内容を意識してお伝えしていただくと話がスムーズです。
- 家の中のどの場所での動作で困っているのか
- どんな動作で困っているのか
- これまでに住宅改修を利用たことがあるか→介護保険の20万円の残額がなければ自費での工事でも工事をするか
- 予算的な制約があれば伝える
2. 業者の選定
介護保険住宅改修の経験豊富な業者にお願いする

ケアマネジャーや地域包括支援センター職員の協力を得ながら、住宅改修を行う業者を選びます。
もしも、工事をしてもらいたい業者があれば、本人・家族から事業者を自ら指定することができます。例えば以下のような業者などを指定される場合があります。
- 以前に住宅改修をしてもらった業者
- 自宅を建てた工務店・ハウスメーカー
- 近所のリフォーム業者
- 知り合いの工務店
業者を希望・指定することはできますが、住宅改修の経験が浅い業者も多いです。介護に関する知識や住宅改修の手続きに関する経験がない業者に依頼することはあまりおすすめできません。高齢者の身体状況に関する正しい知識がないと、適切な位置に手すりを取り付けることができず、動作の安全性向上につながりません。
住宅改修について経験が豊富な事業者に相談することをおすすめします。専門的な知識があれば、その方の病状や歩き方、動作の特徴、体格などを踏まえて、適切な工事の提案ができます。また、工事に関する情報の引き出しも多いので、様々な方法の中からベストな提案をすることができます。施工実績や施工事例などをホームページ等に掲載している業者もありますので、参考にするといいでしょう。
福祉用具をレンタルしているなど、すでに関わりのある福祉用具事業者にお願いすることもあります。本人の身体状況をある程度把握しているので、そちらにお願いすることもおすすめです。福祉用具事業者の住宅改修担当者や、福祉用具事業者が紹介する担当者が住宅改修の窓口となって対応してくれます。
相見積もりは必要?
介護保険制度上では複数事業者からの相見積が推奨されています。住宅改修に関しては、手すりの取付けなど、少額な工事がほとんどですので、それほど金額に大きな差がありません。信頼する事業者や信頼する事業者による紹介で、提案内容が納得できるものであれば、相見積もりをせずに住宅改修をお願いするのもいいでしょう。
特に、急ぎで工事をしたい場合や、工事の内容がもう決まっているのであれば、相見積もりせずにすぐに依頼をした方が早く進みます。
どの業者を選べばいいかわからない、と思ったら、ケアマネジャーさんに一任しましょう。本人の身体状況をよく知っており、地域の業者についての情報も豊富に持っていますので、お任せするといいでしょう。
業者の選定ができ、訪問日の調整ができたら、工事の担当者とケアマネジャーまたは地域包括支援センター職員が自宅を訪問します。
3. 現地調査
実際の動作を本人がやってみせる

工事の担当者とケアマネジャー(または地域包括支援センター職員)が自宅を訪問します。
工事を希望する場所について確認をします。どんな動作をするときに、どのように困っているのかを正確に伝えましょう。
また、実際に本人にその動作をしてもらうことをおすすめします。どの部分に手をついているか、姿勢の保持に問題はないか、または、危険性の高い動作をより安全な動作に切り替えることはできないかなど、検討を行います。
一般的に、高齢者が住み慣れた自宅での動作を、安全面のために別の動作に切り替えることはあまりしません。右側からまたいでいたのを左側からまたぐとか、右足から足を出していたのを左足から出すとか。このような動作の修正は理屈ではわかっていても、日常習慣的な動作に落としこむことは、なかなか難しいというのが実感です。
特に認知症の方は、動作の習得がより困難になります。せっかくつけた手すりが使われないということもあります。
なので、これまでの動作をベースに、より安全性を高めるためにはどのような補助が必要か。という観点から提案することが望ましいです。
また、手垢が壁についているようであれば、それは手で壁を支えていることを意味していますので、その付近に手すりを設置することがおすすめです。
住宅改修業者だけでなく、様々な方の意見を反映することも重要です。ケアマネジャーや、サービス利用の際に担当している理学療法士や機能訓練指導員等がいれば、意見を参考にします。専門職としての有効なアドバイスをすることもあります。
介護保険情報・限度額の確認などの打ち合わせ

介護保険を使った工事を希望する場合、工事が介護保険の対象になるかを確認します。
有効な介護保険証の確認・介護保険負担割合証の確認を行います。これまでに住宅改修を行っている場合は、残額がどの程度残っているのかを確認します。不明な場合は市町村の窓口に確認することもできます。
市町村に提出する住宅改修の申請書を作成するために、住宅改修の担当者が図面を作成し、工事場所の写真を撮影します。住宅改修の申請では、事前申請として工事前の施工予定場所の写真・事後申請として施工後の写真を提出しなければいけません。
また、ケアマネジャーは「住宅改修が必要な理由書」を作成します。これは住宅改修を介護保険で行うための根拠となる書類です。身体状況や介護状況、動作における課題と住宅改修によって期待される効果などを書類に記載します。
住宅改修理由書の書き方はこちらの動画とページで解説していますので、よろしければご参照ください。

4. 見積の提案・契約
見積書の確認

住宅改修担当者から工事費用の見積りが提示されます。
見積書や、工事図面などを見ながら、工事内容を確認します。打ち合わせした内容との齟齬がないか、確認しましょう。
見積の内容で問題がなければ、工事の契約を行います。契約内容の説明をよく確認し、契約の同意・署名を行います。

遠藤哉社長
シンプルな工事内容であれば、当社スタッフは現地調査を行ったその場で見積の概算を提案することも可能です。
自社で制作したiPad専用アプリがありますので、即時見積を提案することもできます。お急ぎの方はご相談ください。
受領委任払いと償還払い
市町村に申請をするための書類を作成します。住宅改修の手続きには、受領委任払いと償還払いという2つのパターンがあります。


受領委任払いと償還払い、最も大きな違いはお金の流れです。
受領委任払いは、利用者からは自己負担分に応じた費用のみを住宅改修業者に支払います。残りの介護保険負担分は市町村から業者へ直接支払われるという仕組みです。
それに対して償還払いは、利用者がいったん全額を住宅改修業者に支払い、工事・手続きの完了後に市区町村から払い戻される方式です。簡単に表にまとめています。
受領委任払い | 償還払い | |
事業者登録 | 必要 | 不要 |
事業者の研修 | 参加必須の自治体もあり | なし |
住宅改修費の支払い方 | 自己負担分に応じた費用負担のみ業者に支払う | 全額いったん利用者側が業者に支払う(事後に市町村から保険分が支払われる) |
申請方法 | 事業者が市町村に申請 | 原則、利用者が申請(実際は事業者が代行することが多い) |
メリット | 利用者は自己負担分のみの支払いで済む 住宅改修について一定の理解がある業者が施工する | 登録に関係なく、どの事業者からでも自由に選べる |
デメリット | 受領委任払いに対応していない自治体もある | 一度全額支払わなければいけない 住宅改修に慣れていない業者が工事を行う可能性も |
また後日詳しくまとめようと思いますが、介護保険の住宅改修には受領委任払いと償還払いという2つの方式があると覚えておいてください。
5. 事前申請手続き

利用者からの同意を受けて、工事前の事前申請を行います。
通常、住宅改修を行う業者が市区町村の役所に行って申請を行います。市町村の窓口に、申請書類を提出します。この書類には、申請書のほか、見積書や工事図面、事前写真、住宅改修が必要な理由書などが含まれます。
申請から着工許可までにかかる日数は市町村によって差があります。介護保険の住宅改修は、市町村からの着工許可が出るまで工事はできません。
6. 工事

市町村からの許可が下りたら工事が行われます。
契約した内容に従い、業者が工事を行います。大きな工事でなければ即日完了します。
トイレの便器を交換する場合や、浴室をユニットバスに変更するなど、大規模な工事になる場合は期間もかかります。その間、トイレなどが使えない場合はショートステイなどを短期的に活用する場合もあります。
工事が完了したら、安全に動作ができるか、工事を行ったために別の不具合が生まれていないか、実際に使ってみて必ず確認しましょう。
住宅改修担当者は、市町村へ事故申請の書類を提出しなければいけないので、住宅改修後の写真を撮影します。
工事後に自己負担の金額(償還払いの方はいったん全額)支払います。支払い方法は業者によっても異なりますが、少額な工事が多いため、現金払いというケースも多いです。
7. 事後申請手続き
住宅改修が無事に完了したことを市町村に報告します。
市町村による確認が完了し、問題がなければ市町村から住宅改修費が振り込まれます。受領委任払いの場合は事業者に、償還払いの場合は指定した利用者の銀行口座等に振り込みが行われます。
住宅改修完了後
住宅改修の後に、新たに対応が必要になる場合もあります。
身体状況が悪化し、別の場所にも手すりが必要になる場合や、別の疾患などにより新たに工事が必要な場所が増えることもあります。高齢者の身体状況は変化しやすく、ひとつの課題がクリアになっても、また新たな課題が生まれることも多いです。
再び工事が必要な状況であれば、ケアマネジャー等に相談しましょう。前回工事の残額があれば残額分を使って住宅改修をすることもできます。
以上が住宅改修の一般的な流れです。
着工までにかかる日数
介護保険住宅改修の流れを解説しました。あくまでこれは一般的な流れなので、この通りではない場合もあります。
相談から着工までどのくらいの日数がかかるのかといういうと、これは市町村や業者によっても異なります。
以下の表は、令和4年に全市区町村を対象に行われた調査「介護保険の福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修の適正化に関する調査研究事業」の報告書から抜粋したものとなります。
工事前の事前申請を市町村に提出してから、事後申請を経て費用が給付されるまでの日数が掲載されています。最も多いのが30日~59日で、それに続くのが60日以上という結果です。平均すると36.6日となっています。

住宅改修の手続きにかかる日数は、市町村によってかなり差があることがわかります。規模の小さな村では、事前申請から、着工許可・工事着工・事後申請・給付まで、その日のうちに全て行われた事例もあるようです。
また、業者によっても、住宅改修のための書類作成に慣れていない業者などは時間がかかる傾向がありますので、業者選びも重要です。住宅改修の経験の豊富な業者を選ぶことをお勧めします。
まとめ
介護保険住宅改修の流れについて解説しました。
もう一度住宅改修の流れをおさらいします。
- 相談
- 業者の選定
- 現地調査
- 見積の提案・契約
- 事前申請手続き
- 工事
- 事後申請手続き
このように、住宅改修では、申請などの手続きを含めいくつかのステップを経ることが必要になります。市町村の許可が出なければ着工できないため、頼んだらすぐに着工、というわけにはいかないのです。
もし急ぎでどうしても、という場合は介護保険を使わずに工事をすることや、着工までの間はレンタルの福祉用具を使うことなども含めてご検討ください。

この記事を監修したのは
遠藤 哉
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
資格:一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士
大手ハウスメーカーを経て、2009年に株式会社ユニバーサルスペースを創業。介護リフォームに特化し、「介護リフォーム本舗」として全国100店舗超を展開している。チェーン全体での介護リフォームの累積工事件数は約120,000件を超える。
遠藤哉社長
ご相談ありがとうございます。
介護保険を使う場合、手続きなどが必要になります。住宅改修の担当者が必要な手続きについてご案内させていただきますのでご安心ください。