介護リフォームと住宅改修の違いとは?介護保険で行うバリアフリー化工事の目的

介護リフォームと住宅改修、どこが違う? 住宅改修
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

遠藤 哉

介護リフォームや住宅改修。よく聞く言葉ですがふたつの言葉はどう違うのでしょうか。

質問者
質問者

人によって「住宅改修」って言う人と「介護リフォーム」って言う人がいて、どっちも同じように思うんだけれど、それは何か違いがあるの?

<span class="fz-12px">株式会社ユニバーサルスペース</span><br><span class="fz-12px">遠藤哉</span>社長
株式会社ユニバーサルスペース
遠藤哉社長

ご相談ありがとうございます。

「介護リフォーム」も「住宅改修」も工事の内容は変わりません。

「住宅改修」は介護保険制度上の名称で、行政では「介護リフォーム」という言葉は使用しません。ただ、一般の方から見ると、「介護リフォーム」の方がイメージしやすいようです。

当社も「介護リフォーム本舗」というブランドでサービスを提供しております。

介護リフォームと住宅改修、定義の違いについて詳しく解説します。

介護リフォームと住宅改修の違い

介護リフォームと住宅改修、その違いについての明確な定義はありません。そのため、人によって理解が異なる部分もあります。

一般的に広く認識されている内容や、当フランチャイズ内の見解などをベースに解説します。

住宅改修と介護リフォームの違い

住宅改修とは

まずは比較的定義のしやすい「住宅改修」から先に解説します。

介護保険法に住宅改修の記載があり、「住宅改修」に関しては以下の通り介護保険法で定義されています。

(居宅介護住宅改修費の支給)
第四十五条 市町村は、居宅要介護被保険者が、手すりの取付けその他の厚生労働大臣が定める種類の住宅の改修(以下「住宅改修」という。)を行ったときは、当該居宅要介護被保険者に対し、居宅介護住宅改修費を支給する。

介護保険法 第45条

用語の定義として明確に記載されているわけではありませんが、介護保険法には「手すりの取付けその他の厚生労働大臣が定める種類の住宅の改修」とされています。

そして、厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費というものがこちらです。

○厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類 (平成十一年三月三十一日)(厚生省告示第九十五号)

介護保険法第四十五条第一項に規定する厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類は、一種類とし、次に掲げる住宅改修がこれに含まれるものとする。

一 手すりの取付け
二 段差の解消
三 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
四 引き戸等への扉の取替え
五 洋式便器等への便器の取替え
六 その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

厚生省告示第九十五号
住宅改修の対象工事

つまり、住宅改修は、「介護保険で住宅改修費として支給対象となる工事」のことをいいます。

介護リフォームとは

介護リフォームスタッフが手すりを持っている

これに対して、介護リフォームは公的な文書等で具体的な定義されたことはありません。

ただ、「介護」が必要な方のための「リフォーム」であるというイメージにつながりやすく、介護リフォームという用語が定着しています。

一般的には、介護を必要とする人が安全かつ快適に生活を送れるように、その人に合わせてその環境を整えるリフォーム工事のことを介護リフォームと言います。介護をされる人の転倒予防や動作の安定性の確保などはもちろんですが、介護する側への配慮も欠かすことはできません。介護リフォームで手すりを取り付けた結果、他の人が通りにくくなることや、怪我のリスクが増えることは避けなければいけません。

行政文書などで使う場合は住宅改修という用語を使うことが多いため、介護業界の専門職は住宅改修という用語を使うことが多いです。逆に、一般の方たちには住宅改修という言葉はまだなじみがあまりないため、介護リフォームという言葉を使うことが多いです

利用者
利用者

「住宅改修」って言われると、家を改造するみたいで、すごい大規模な工事をするんじゃないかと思いました。普段使う言葉ではないのでピンとこないですね。

介護保険で行われるのは少額工事ですが、「住宅改修」という言葉が大規模な工事を連想しやすいという声はよく聞きます。

なぜ介護保険法で「リフォーム」という言葉を使わなかったのかというと、当時の厚生労働大臣であった小泉純一郎氏が、カタカナ語を極力使わないという方針を打ち出したためです。

そのため介護保険のサービス名などから、カタカナが追放されたという経緯があります。リフォームやレンタルといったより身近な言葉があっても、改修や貸与といった硬い表現が用いられるようになりました。

※ただし、日本語で表現することが難しかった「リハビリテーション」と「サービス」はカタカナ表記が使われました。

では、介護リフォームと住宅改修はまったく同じなのかというとそうではありません。

介護リフォームと住宅改修、範囲の違い

具体的に介護リフォームと住宅改修の違いを見てみましょう。

介護リフォームは支給限度額を超えた工事を含む

介護保険にはひとり20万円分という給付の限度額があります。この限度額の範囲内の工事が「住宅改修」として給付対象に認められます。

介護リフォームには、この超過分(自費分)も含まれます。限度額以上の工事分は住宅改修とはみなされませんが、限度額超過分も含めたのが介護リフォームです。

介護リフォームは介護保険未認定者への工事を含む

手すりを利用者に触ってもらって確認する介護リフォームスタッフ

介護リフォームと住宅改修、工事内容は同じでも対象者による違いがあります。

住宅改修の対象者は要介護・要支援認定を受けている方に限定されますが、介護リフォームは介護認定の有無で対象者を限定しません。介護保険未認定の方や、予防を目的とした工事に関しても介護リフォームの範囲に含まれます。

もちろん、介護保険以外の制度(住環境整備事業)などを利用した工事も介護リフォームとして含まれます。

このように、住宅改修は制度の適用範囲内であることを条件としますが、介護リフォームはより包括的な意味を持っています。

介護リフォームの対象となる工事の内容をどこまで含めるかは会社等によって異なります。

バリアフリーとはどう違うの?その他の用語との違い

バリアフリーと介護リフォームの違い

車椅子で移動する男性と男性リフォームスタッフの会話

介護リフォームや住宅改修によく似た用語に「バリアフリー」という言葉があります。

一般的には「高齢者や障害者など、さまざまな人が生活していく上での不便や障壁(バリア)を取り除き、社会参加できる環境にすること」がバリアフリーです。

バリアフリーというと、物理的な障壁(段差など)を取り除くことだとイメージする方が多いと思います。ただ、バリアフリーには心理的・制度的な障壁なども含まれます。障害の有無だけでなく、年齢、性別、人種などによって生まれるあらゆるバリアを想定している言葉です。

介護リフォームのように工事に限定されることなく、バリアフリーという言葉はより幅広く使われる言葉となっています。

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ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い

ユニバーサルデザインという言葉もよく使われます。

一般の方
一般の方

バリアフリーの進化形がユニバーサルデザインなんじゃないの?

バリアフリーとユニバーサルデザインを同じと考えている方や、バリアフリーを強化したものがユニバーサルデザインだと思っている方もいますが、これは誤りです。ユニバーサルデザインとバリアフリーは並んで語られることが多いですが、考え方がそもそも異なります。

バリアフリーはもともとあるバリアを取り除くことです。それに対して、ユニバーサルデザインは「あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等に関わらず、多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする」という考えに基づいています。

はじめからバリアを生まない普遍的なデザインを設計することをユニバーサルデザインと言います。住宅であれば、新築の段階であらゆる状態の方への配慮を含めてデザインすることがユニバーサルデザインと呼ばれます。具体的には以下のような内容です。

  • 自分が車いすでの生活をするようになっても使いやすい広いトイレ空間にする
  • 子供が暮らしても安全な庭を作る
  • 傾斜や段差をできるだけ作らず誰でもアクセスしやすいようにする

アクセシビリティとの違い

また、公共の場所などに誰でもアクセスしやすいようにすることをアクセシビリティと言います。アクセスのしやすさという意味では、段差解消などのバリアフリー工事も含まれます。もちろん、これも物理的な問題だけではありません。目的地までの案内がわかりやすいか、視覚障害や聴覚障害などの方にもわかるように設計されているか、なども含めています。

あらゆる人がアクセス可能なインターネット上のホームページなどにも同じように考えられます。動線設計や、ボタンのクリックしやすさ、配色のコントラスト、画像には絵を判断できない人のためにも説明(Altタグ)を加えるなど、あらゆる配慮を行い、バリアを生まないデザインを行います。インターネット上のアクセシビリティをウェブアクセシビリティと言います。

バリアフリーに関する用語は様々で、それぞれ意味が異なりますので、なんとなくでもいいので理解しておくといいでしょう。

介護リフォーム・住宅改修でバリア(障壁)を取り除く

手すり棒を持ってくる女性リフォームスタッフ

介護リフォーム・住宅改修の用語だけでなく、バリアフリー・ユニバーサルデザイン・アクセシビリティという用語についても解説しました。

いずれの用語も、対象範囲は異なりますが、バリア(障壁)を取り除くという意味では同じです。

要介護状態になることで様々なバリアに直面します。バリアを取り除くことで、活動や参加を支え、促進することが、自立支援につながります。目の前にあるバリアを取り除くだけでなく、その先にある生活を支えるのが介護リフォームだと言えるでしょう。

まとめ

介護リフォームと住宅改修の違いについて解説しました。

介護リフォーム・住宅改修は利用者の生活環境を整え、自立を目指すために重要な意味を持ちます。

ただ、介護リフォームや住宅改修という言葉はまだまだ十分に社会に浸透しているとは言えません。私たちも、「介護リフォーム本舗」というブランド名での活動を通して、介護リフォームが広く理解されるように努めていきます。

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

遠藤 哉

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
資格:一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

大手ハウスメーカーを経て、2009年に株式会社ユニバーサルスペースを創業。介護リフォームに特化し、「介護リフォーム本舗」として全国100店舗超を展開している。チェーン全体での介護リフォームの累積工事件数は約120,000件を超える。