介護リフォームで手すりを設置する際、
「どこに付けるか」「高さはどのくらいか」といった点は、優先順位の高い検討項目となります。
その一方で、手すりの「太さ」については、深く考えられないまま決まっているケースも少なくありません。
しかし実際には、手すりの太さは
特に高齢者の場合、
加齢による握力の低下や手指の動かしにくさがあるため、
「合わない太さ」の手すりは、
使いにくいものになったり、使われなくなったりすることもあります。
この記事では、
高齢者向けの介護リフォームにおいて
手すりの太さの考え方を、
実際の使い方や設置場所を踏まえて、わかりやすく解説します。
高齢者向け介護リフォームの基本:太さは「32〜35mm」がベース
高齢者向けの介護リフォームにおいて、
手すりの太さは直径32〜35mm程度がひとつの基準となります。
このサイズは、
- 握りやすさ
- 体を支えたときの安定感
- 毎日使っても疲れにくいこと
といった点のバランスがよく、
一般的には多くの高齢者にとって無理なく使いやすい太さとされています。

とはいえ、これが正解というわけではありません。32~35mmじゃないから危ないというわけでもないです。
詳しくはこの後でも説明しますが、その状況や利用者によって適した太さがあるからです。
人間工学における最適把持径から手すりの太さを考える
手すりの太さを考えるうえで、重要な考え方のひとつが人間工学における
「最適把持径(さいてきはじけい)」です。
最適把持径とは、人が円柱状のものを握ったときに、
最も力を出しやすく、かつ疲れにくいとされる直径のことを指します。
人間工学の分野では、
この最適把持径は手の長さ(手首から中指先端まで)の約18〜22%程度が目安になるとされています。
日本人高齢者の平均的な手の大きさに当てはめると、
おおよそ30〜40mmの範囲となります。
実際の介護リフォームでは、
握力の低下や指関節の動かしにくさも考慮し、
32〜35mm程度が最も使いやすい太さとして選ばれることが多くなっています。

細すぎ・太すぎる手すりの注意点
手すりは「細ければ握りやすい」「太ければ安心」という単純なものではありません。
- 細すぎる手すり
指先に力が集中しやすく、痛みや疲れを感じやすくなります。
使い続けるうちに、無意識に手すりを使わなくなってしまうこともあります。 - 太すぎる手すり
指が十分に回らず、しっかり握れないため、
体を支える力が不安定になりがちです。
この両者の中間にあたる32〜35mmは、
「握り込める」「体を預けても安定する」という
2つの要素を両立しやすい太さです。
多くの手すりメーカーも、この範囲を基本に商品を設計している
この32〜35mmという太さは、
現場の経験則だけで決まっているわけではありません。
実際に、住宅向けの介護用・室内用手すりを製造している
多くのメーカーでは、
- φ32mm
- φ35mm
を基本サイズとして商品を展開しています。
同じシリーズで32mmと35mmの2パターンを用意し、
設置場所や使い方に応じて選べるようにしているメーカーも多いです。
え?たった3mmの違いなんて、気にならなくない?
という方もいるのですが、実際手に持ってみると握った時の感覚は大きく異なります。
この3mmの違いで、握りやすさ、使いやすさにも大きく影響しています。
海外基準(ADA法)から見ても妥当な太さ
参考として、アメリカのADA(Americans with Disabilities Act)では、
手すり(グラブバー)の直径を約32〜50mm(1.25〜2インチ)の範囲と定めています。
参照:アクセシビリティチェッカー(アメリカ):ADA Requirements for Handrails: Standards and Compliance
手の大きな方の多い欧米でも、32mm以上という基準が明確に示されています。
日本の高齢者向け介護リフォームで一般的に使われている
32〜35mmという考え方は、海外の基準とも整合しています。
縦手すりと横手すりで、太さを変えることも?
手すりの太さを考える際には、
設置場所だけでなく、「どのような動作で使うか」を意識することも大切です。
介護リフォームでは、
手すりの向きによって、
手の使い方や力のかかり方が変わるため、
同じ対象者であっても、設置場所・内容によって手すりの太さを変えることもあります。
縦手すり|32〜35mmが基本、細めでも対応しやすい
縦手すりは、主に次のような場面で使われます。
- 立ち上がり・座り動作
- トイレや浴室の出入り
- 玄関での上り下り
これらの動作では、
手すりをしっかり握り込み、引いたり押したりする力が必要になります。
そのため縦手すりでは、
32〜35mm程度が基本とされます。
実際の現場では、
35mmを使用するケースも多いのですが、
設置場所や使い方、対象者の状況によっては、
やや細めの32mm前後の方が握り込みやすい場合もあります。
横手すり|安定感を重視し、34〜35mmがおすすめ
一方、横手すりは次のような場面で使われます。
- 廊下での移動
- トイレ内での方向転換
- 居室内での姿勢保持
横手すりでは、
手すりを強く握るというよりも、
手を添える・体を預けるといった使い方が中心になります。
そのため、
手のひら全体で安定して支えられることが重要となります。
いわゆる手すりを「擦る」という使い方です。
この場合、縦手すりよりもやや太めのほうが安心感があります。
介護リフォームでは、
横手すりには34〜35mm前後が選ばれることが多く、
特に室内の移動補助では、この太さが使いやすいとされています。
縦と横で「おすすめの太さ」を使い分ける

手すりの用途・目的が異なれば、最適な手すりの太さが変わることもあります。
高齢者向け介護リフォームにおける手すりの太さは、
次のように考えると分かりやすくなります。
- 縦手すり
→ 32〜35mm(状況によっては細めでも) - 横手すり
→ 34〜35mm(安定感を重視)
どちらの場合も、
「絶対この太さでなければならない」というものではありませんが、
安全性とのバランスを考えて目安にしていただくといいでしょう。
太さは取付ピッチにも関係する
手すりの太さは、
使いやすさだけでなく、
取付ピッチ(ブラケット=固定金具の間隔)にも影響します。
太さがある手すりほど剛性が高く、
設置条件によっては、
取付ピッチをやや広く取れる場合があります。
つまり、太めの手すりの方が、手すりを設置するために使う金具の数が少なくなる可能性があるということです。
製品の仕様や下地の状況によってピッチは異なります。
メーカーの基準を確認したうえで設計・施工することが大切です。
動作を想定することが、最適な太さにつながる
同じ住まいの中でも、
- 立ち上がる場所
- 移動する場所
- 姿勢を保つ場所
によって、
手すりの役割は異なります。
「どのように使うのか」を想定しながら、
縦・横それぞれに合った太さを選ぶことが、
安全で使いやすい介護リフォームにつながります。
設置場所で考える手すりの太さ
室内・屋外・浴室で太さが変わる理由
手すりの太さは、
縦か横かといった「使い方」だけでなく、
設置する場所(環境)によっても、適した太さが少しずつ変わってきます。
ここでは、その理由を整理します。
室内手すり|使用頻度が高く、32mm, 35mm前後がよく使われる
室内(廊下・居室・トイレ内など)は、
日常生活の中で最も手すりを使う頻度が高い場所です。
室内手すりには、
- 毎日の移動で繰り返し使う
- 「握る」より「支える・添える」動作が多い
- 体重を預ける時間が比較的長い
といった特徴があります。
このような使い方では、
指先だけで握るよりも、
手のひら全体で安定して支えられる太さが求められます。
そのため、介護リフォームの実務では、
室内手すりには35mm前後が選ばれるケースが多くなっています。
ただ、しっかり握りこむ動作が求められる場面や、対象者の状況などに応じて32mm前後を選択することもあります。
屋外手すり|安定感重視、34mm前後が標準的
屋外(玄関アプローチ・外階段など)に設置する手すりは、
室内とは異なり、足元や環境条件の影響を受けやすい場所です。
- 靴を履いた状態で使う
- 段差や勾配がある
- 雨や寒さなどの影響を受ける
このような条件下では、
しっかり体を支えられる安定感が重要になります。
そのため、屋外手すりでは、
34mm前後が標準的な太さとして採用されているケースが多く、
各メーカーでもおおむねこの太さでラインナップされています。
太すぎず細すぎないバランスの取れたサイズとして使われています。
浴室手すり|32mm前後が主流、握り込みやすさを重視
浴室は、
安全面において特にリスクの高い場所です。
- 手が濡れて滑りやすい
- またぐ・向きを変えるなど細かい動作が多い
浴室では、
体を預けるというよりも、しっかり握り込む動作が多くなります。
そのため、浴室用の手すりは、
室内や屋外の手すりよりもやや細い、32mm前後が主流となっています。
指が確実に回り、
濡れた手でも握り込みやすいため、
安全性と使いやすさのバランスが取りやすくなります。
また、一部のメーカーでは、
浴室での握り込みやすさをさらに重視し、
32mmよりもさらに細い手すりをラインナップしている場合もあります。
場所によって太さが違う
ここまでを整理すると、
介護リフォームでよく使われる手すりの太さは
次のように考えられます。
- 室内:35mm前後、場面や用途によって32mm前後
- 屋外:34mm前後(不安定な足元でも体を支える)
- 浴室:32mm前後(握り込みやすさを重視)

とはいえ、この数字が「正解」ではありません。
手すりの太さは、
数字だけで決めるものではありません。
- どこで使うのか
- どんな動作をするのか
- どのくらいの頻度で使うのか
これらを踏まえたうえで、
32〜35mmを基準に、場所に応じた太さを選ぶことが、
安全で使いやすい介護リフォームにつながります。
- Qもともと自宅についていた手すりが太すぎてつかめない。握りやすい手すりの太さに変更したいけれど、介護保険の住宅改修って使えますか?
- A
介護保険の住宅改修で認められる可能性があります。
実際に使用することが困難な理由があり、そこでの生活動作にリスクが高いと判断できる場合は、手すりを適切な太さのものに設置し直すことも介護保険で認められることがあります。明確に必要な理由が説明できることが前提です。市区町村によって異なる場合もありますので、もし不安な場合は確認することをお勧めします。
- Q小児科など、主に子供が使う場所でも35mmにした方がいい?
- A
これは状況にもよると思いますが、幼児の手は小さく、35mmではしっかり握ることが難しいです。幼児用の手すりとしてメーカーが発売しているものは27~28mmなどが多いです。
小さい子供が使う場所ではそれを想定してあえて細い手すりを設置することもあります。下記の画像は新横浜駅の手すりですが、段違いで2本の手すりが並行しています。
よく見ると、上の手すりは太めの手すり、下の手すりはそれよりも細い手すりになっています。背が低い子供は低い位置にある手すりを使うため、使う人を想定して手すりの太さを変えているという配慮が見られます。
まとめ|最適な手すりの太さとは
手すりの太さには、
「これが正解」というひとつの答えがあるわけではありません。
これまで見てきたように、
高齢者向け介護リフォームでは
32〜35mmをひとつの基準として考えながら、
- どこで使うのか
- どのような動作をするのか
- 握るのか、支えるのか
といった点を踏まえて、
適切な太さを判断することが重要になります。
判断が難しい場面もある
一見すると小さな違いに思える手すりの太さですが、
実際には、
- 使う人の手の大きさや握力
- 動作の癖や生活動線
- 設置場所の環境
などによって、
使いやすさや安全性が大きく変わります。
そのため、
専門的な知識や、対象者の状態を見極める力が必要になる場面も少なくありません。
迷ったときは、専門家に相談を
「どの太さが合っているのかわからない」
「今の手すりが、少し使いにくい気がする」
そんなときは、
専門家に相談することが安心につながります。
実際の動きや使い方を確認したうえで検討することで、
より安全で、使いやすい手すりにつながります。

介護リフォーム本舗が大切にしていること
介護リフォーム本舗では、
介護リフォームを専門に行うフランチャイズとして多くの実績とノウハウを積み上げてきました。
対象者の状態や生活環境を、ケアマネジャーや介護福祉の関係者との情報共有も含めて確認し、
その方にとって使いやすい太さの手すりをご提案します。
手すりの設置で困ったときには、ぜひ一度ご相談ください。
![介護リフォーム本舗[公式]介護リフォーム・住宅改修に特化したフランチャイズ](https://kaigor.com/wp-content/uploads/2024/07/logo_mini.png)






