屋外の介護リフォーム!住宅改修・バリアフリー化で外出・社会参加を支える

屋外の介護リフォーム 住宅改修
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

遠藤 哉

介護リフォーム」というと、ご自宅の屋内をイメージされる方が多いようです。屋内にあるトイレ・浴室・階段などのリフォームに意識が向きやすいですが、敷居内で必要な場所であれば、屋外でも介護保険住宅改修の対象となります。

通院やデイサービスの利用など医療・介護を受けるためにも必要で、なおかつ外出や社会参加にもつながる屋外のリフォーム。介護リフォームを検討する際には屋外にも目を向けましょう。

介護リフォーム本舗として全国でフランチャイズ展開をする株式会社ユニバーサルスペースの遠藤代表から、屋外の介護リフォームについてのアドバイスを提供します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 戸建て住宅に住んでいて介護リフォームを考えている方
  • 屋外に段差などがあり、外出に困っている方
  • 敷地内に段差などの障害があるため外出ができずに困っている方やそのご家族・ケアマネさん

【この記事で解説していること】

  • 屋外のバリアフリー工事も介護保険の住宅改修の対象となる場合がある
  • 屋外の手すりには様々な設置方法がある
  • 介護保険で段差解消や路面の滑り止めなどをすることができる
  • 保険対象外だが、足元灯の設置や階段昇降機などの介護リフォームも

屋外の介護リフォームによる効果

屋外の介護リフォームで様々な効果を得ることができます。

外出の安全性の確保

介護が必要な状況になっても、外出する機会は必要です。医療機関への通院、デイサービス・通所リハビリの利用、食品や日用品の買物、ゴミ捨て、回覧板を回すなど、自宅で生活を送るうえで外出の機会は数多くあります。しかし、戸建て住宅に関しては、公道へ出るまでの動線が必ずしもバリアフリーであるとは限りません。

屋内と異なり、外には様々な転倒リスクがあります。

  • 雨や雪で床面・路面が滑りやすくなる
  • 強風などでバランスを崩しやすい
  • 床面・路面に凹凸がある
  • 障害物により動線が確保しにくい
  • 時間帯により視界が悪く、転倒のリスクが高まる

これらの理由から、屋内で移動するよりも屋外は危険性が高く、より注意が必要であることがわかります。

社会参加の機会を増やす

屋外の階段昇降

誰にも「生きがい」は必要です。人と会うこと、趣味を楽しむこと、おいしいものを食べに行くこと。

自宅にいるだけでは実現できないこともたくさんあります。

外出し、社会参加・交流の機会を持つことで心身は活性化され、継続することでさらにモチベーションも向上します。社会参加の機会を持つことは、閉じこもり傾向になりやすい高齢者にとって非常に大きな意味を持ちます。

屋外に段差などのバリアが原因で、外出を控えることになると、悪循環から機能低下・うつ傾向が進み、生活にも大きく影響を及ぼします。

このような理由から、外出ができる環境を整えることは自立支援にとっても非常に意味があることだと言えます。

住宅改修の理由として、「生きがいのため」という内容で申請をすると、市区町村の窓口で申請が却下される事例があります。屋外のリフォームが日常生活を送るうえで必要な理由を明記することをお勧めします。

これは社内独自データとなりますが、いえケア運営会社がフランチャイズ本部を行う「介護リフォーム本舗」全店舗の場所別相談件数(2022年1月~12月)を見ると全498,230カ所の相談のうち、71,271カ所が屋外に関する工事の相談となっています。全体のおよそ14%は屋外の介護リフォームの相談で、2番目に希望の多いリフォーム場所であることがわかります(*1)。

介護リフォーム場所別相談件数 第二位は屋外

手すりの取り付け

屋外住宅改修のポイント

玄関の外から公道に出るまで、すべて平坦で段差がまったくないという家はそうありません。なぜなら、日本では建築基準法によって住宅の1階床面は地面から450mm以上高くしなければならないという規定があるからです(例外を除く)(*2)。
そのため、敷地内には凹凸や斜面・段差などの障害があります。これらを安全に移動する手段として、手すりがあります

手すりにつかまることで、バランスを保持しつつ、手で支える力や引く力なども活用しつつ、安全な移動ができます。

屋外用の手すりは雨風にさらされることから耐久性の高い材質が求められます。金属が表面だと気温に影響されやすく、冷たく感じることや熱く感じることがないよう、樹脂で被膜されているタイプを使うことが多いです。

玄関ポーチの介護リフォーム事例

手すりの設置方法

また、屋外は室内と異なり、手すりを打ち付けるための壁がないことが多いです。そこで、屋外では、地面に支柱を立てて手すりを取り付けることが多いです。支柱の取り付け方は、設置場所に応じて様々な方法があります。

硬い地面に支柱を立てる場合は、コアドリルで穴をあけ、そこに支柱を固定するコア抜きという方法で支柱を立てます。砂利や土などやわらかい地面で支柱を立てるには、柱を支えるためのブロック(基礎)を地中に埋め、そこに支柱を固定する方法をとります。そのほかにも、杭(アンカー)を地面に埋め込んで固定するアンカー、壁の側面に固定するサイドアンカーというものを使って固定する方法もあります(下図参照)。

外の手すり取付方法

ご自宅の環境に応じて設置方法が異なりますので、担当者と最適な方法を検討しましょう。

屋外の手すりを含め、介護リフォームで使われる手すりについては以下のページでまとめていますのでご参照ください。

また、手すりの高さは対象者の身長や室内での高さを基準にするのではなく、普段使っている靴を履いた状態の高さを基準に設定しましょう。

相談者
相談者

賃貸アパートの2階に住んでいるけれど、外の廊下や外階段に手すりがなくて困っている。住宅改修で手すりをつけることはできないのか?

株式会社ユニバーサルスペース<br>遠藤代表
株式会社ユニバーサルスペース
遠藤代表

一般的に介護保険の住宅改修は専有部分に限定されますが、「利用者本人の通常の生活領域」として、共用部分の所有者の同意があれば住宅改修が認められることもあります。詳しくはご相談ください。

外手すり施工事例

手すり以外の介護保険対象工事

手すり以外で介護保険対象になる介護リフォームもありますので、紹介します。

  • 段差の解消
  • スロープの設置
  • 路面の舗装

段差の解消

道路面から玄関までは高低差がありますので、これをいかに安全な環境にしていくかが重要です。

大きな段差があると、段差の昇降でバランスを崩して転倒するリスクも高まります。一段の段差は110~160mm程度にすることが望ましいため、大きな段差を複数の小さな段差に分けるという方法もとられます。

複数の段差があるときに一段の高さ(蹴上げ)がバラバラだと段差昇降のリズムを崩すことや踏み外しのリスクが高くなるため、転倒につながる危険性が増えます。各段の蹴上げを均一にすることも重要です。

縁台用踏台

玄関以外の場所から出入りする際には、手すり付きの踏台で段差移動しやすくすることができます。固定設置することで住宅改修の対象となります。縁側や勝手口などに設置することで、大きな段差を小さな階段状にし、庭先での洗濯物干しや駐車場への出入り、玄関以外からの外出が可能となります。

マツ六ホームページより

スロープの設置

車いすや歩行器・シルバーカーで外出される場合は、小さな段差も大きな障害になります。車輪を持ち上げて段差を越える動作が必要になる場合もあり、バランスを崩して転倒するリスクも高まります。

そこで、路面をコンクリートで打設し、平坦な斜面にする方法があります。いわゆるスロープにすることで、段差をなくすことができます。できるだけ角度のゆるやかな斜面にすることや、向きを変える部分には平坦な踊り場を作ることが望まれます。建築基準法上では1/8(高さ100mmに対して水平距離が800mm)よりも勾配を急にしてはいけないとされています。また、表面は粗面にし、すべりにくくすることが法律で定められています(*3)。

また、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の建築物移動等円滑化誘導基準では、1/12(高さ100mmに対して水平距離が1200mm)、車いすを自走(自分で漕ぐ)の場合は1/15(高さ100mmに対して水平距離が1500mm)が望ましいとされています(*4)。

建築基準法バリアフリー法バリアフリー法
車いす自走の場合
勾配1/81/121/15

スロープでは手すりを設置するなど、車いすの脱輪・転落防止にも注意が必要です。スロープ設置など段差解消工事に伴う柵や立ち上がりなどの脱輪防止の工事も住宅改修の対象に含まれます。

スロープの設置について詳細はこちらの記事でまとめていますのでご参照ください。

路面の舗装

凹凸のある路面や、車いすや歩行器で走行できない地面を舗装することも介護保険で認められます。

飛び石や石畳、砂利などの地面は凹凸が大きく、つまづく危険性があります。また、表面が滑りやすい素材は転倒することが懸念されます。床面を舗装することで凹凸をなくし、滑りにくくすることも介護保険の住宅改修対象工事です。

滑りにくさ、水はけのよさなどを配慮した素材にすることで転倒のリスクを減らすことができます。

介護保険対象外の介護リフォーム

屋外の介護リフォームには介護保険制度の住宅改修費の対象外でも、効果的な工事が数多くあります。具体的な提案を3つさせていただきます。

  • 足元灯の設置
  • インターホンの変更
  • 階段昇降機の設置

足元灯の設置

足元灯

外出する際、外がいつも明るいとは限りません。暗いと、段差が見えずに躓くことや障害物が見えずに転倒することもあります。高齢者は視力も低下し、室内の明るさとの明暗差に順応できない場合もあります。安全な移動のためには一定の明るさが必要です。特に足元の明かりがあると、リスクを早めに検知することができます。ソーラー充電タイプや電池式タイプの照明も多いので、電源がなくても場所を選ばずに設置できます。

暗い時間に外出する予定がある方や、デイサービスで帰宅の時間が遅くなる方などは一定の明るさを確保しておくことをお勧めします。

インターホンの変更

インターホンはほとんどの家についていると思いますが、音で呼び出しするだけの機能では不十分な場合もあります。ご高齢の方であれば以下のようにインターホンの変更をすることがあります。

  • 防犯のためにカメラが付いたインターホンに変更する
  • 難聴なので音量調整で音の大きくできるインターホンに変更する
  • 耳が聞こえないので音ではなく光で来訪者が来たことを知らせるインターホンに変更する
  • あわてて出ようとして転ぶことがないように子機を増設する

このような工夫をすることでご自宅での生活が快適になります。

階段昇降機の設置

介護保険の対象になりませんが、階段昇降機を設置する方もいらっしゃいます。外階段があって外出ができないという方には、屋外用の階段昇降機を設置することができます。イス付きのリフトで、座ったままリモコン操作で移動するタイプが一般的です。

デメリットとしては、設置してしまうと階段を歩く人にとってはスペースが狭くなってしまうことや、停電時に使えないこと、なによりコストが高額であることがあげられます。介護保険は適用されませんが、地域によって自治体で補助金の申請ができる場合がありますので確認しましょう。

介護保険外の効果的な介護リフォームを紹介しました。

まとめ

屋外の介護リフォームは外出の機会を作り、利用者の可能性を大きく広げることができます

閉じこもり状態が続くと、運動機会減少・うつ傾向・認知症など、様々なリスクの悪循環が生まれます。これを介護予防の好循環に変えていくためには、安心して外出しやすい環境を作ることが重要です。

ぜひ屋外の介護リフォームで外出機会を増やしていきましょう。

住宅改修に関する手続きや基本的な情報はこちらの記事にまとめていますのでご参照ください。

参考資料

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

遠藤 哉

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
資格:一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

大手ハウスメーカーを経て、2009年に株式会社ユニバーサルスペースを創業。介護リフォームに特化し、「介護リフォーム本舗」として全国100店舗超を展開している。チェーン全体での介護リフォームの累積工事件数は約120,000件を超える。