介護保険を利用して住宅改修を行う際に必要となる「住宅改修が必要な理由書」。
住宅改修が必要となった背景や、利用者の身体状況、生活上の困りごと、改修によって期待される効果などを整理し、「なぜこの住宅改修が必要なのか」を説明するための大切な書類です。
皆さんご存じの通り、介護保険制度は全国共通の制度です。
それなら、住宅改修の理由書も「全国同じ書式を使っている」と思われるかもしれません。
ところが、実際はそうではありません。
実際、現場で働いている方たちも、違う地域の書式を見て、「え?なんで違うの?」と驚く方も多いです。自分の地域の書式が全国統一書式だと思い込んでいる場合もあるのですが、実は違うのです。
提出先となる自治体によって、理由書のレイアウトだけでなく、記入する項目や情報量、確認を求められる内容まで異なることがあります。

住宅改修専門の全国フランチャイズ、介護リフォーム本舗として、さまざまな地域の介護保険住宅改修に携わるなかで、自治体ごとに異なる書式や運用に対応してきました。
今回は、まず厚生労働省が示している標準的な理由書を確認したうえで、神奈川県内の7市の書式を実際に見比べてみます。
同じ神奈川県内だけでも、意外なほど違いがあります。
そもそも「住宅改修が必要な理由書」とは?
介護保険を利用して住宅改修を行う場合、工事を始める前に、住宅改修が必要な理由書などの書類を自治体へ提出します。
厚生労働省は、この理由書について、
「被保険者の心身の状況」「日常生活上の動線」「住宅の状況」「福祉用具の導入状況」などを総合的に考えたうえで、必要な住宅改修の工事種別と、その工事を選んだ理由を記載するもの
としています。
つまり、
「転倒しそうだから手すりを付けたい」
とだけ書けばよい書類ではありません。
こうした情報を整理して、住宅改修とのつながりを説明する必要があります。
まずは厚生労働省の標準的な書式
厚生労働省は「住宅改修が必要な理由書」の標準的な様式を示しています。
標準様式は大きくP1とP2に分かれています。

P1では、利用者や理由書作成者の基本情報に加えて、
- 利用者の身体状況
- 介護状況
- 福祉用具の利用状況
- 住宅改修によって日常生活をどのように変えたいか
などを整理します。

P2では、P1で整理した状況をもとに、
- 改善しようとしている生活動作
- 現在どのようなことで困っているのか
- 改修の目的・期待される効果
- 実際に行う改修内容
を関連付けながら記入する構成になっています。
これを見ると、

え?この書式を全国で使えばよくない?
と思うかもしれません。
ところが、この様式は全国一律で使用することが義務付けられたものではありません。
厚生労働省も、国が示した様式はあくまで「標準例」であり、市町村が独自に様式を定めることが可能であるとしています。
そこで、実際の自治体ではどのような理由書が使われているのか、神奈川県内を例に見てみましょう。
神奈川県内だけでも、理由書はこんなに違う
今回は、川崎市、相模原市、大和市、横浜市、藤沢市、逗子市、二宮町の7市町を比較しました。
同じ神奈川県内、同じ介護保険住宅改修で使用する理由書ですが、並べてみるとかなり違います。
川崎市


川崎市です。ほぼほぼ厚労省の示している標準書式に準拠していますが、作成者の部分で事業所番号を求めているというのが強いて言えば大きな違いでしょうか。事業所数も多い川崎市なので、似た事業所と間違わないようにというのはわかる気がしますね。
相模原市


同じく政令指定都市の相模原市。
こちらも川崎同様、内容は標準的な書式に準拠しています。認定申請中や、入院中、2回目以降の住宅改修などの注意すべきポイントに関してチェックをつけることで、事務上のミスを防ごうという意図を感じます。これも大規模自治体ならではの工夫なのかもしれません。
大和市

大和市です。裏面は標準書式とほぼ同じなので、表面だけを紹介します。
表面も、ベースは標準的な書式ですが、特徴があります。
身体状況を疾患とADLに大きく分ける。
介護状況を家族等による介護と介護サービスの利用状況に分ける。
情報を細分化することで状態像を見やすくしたという印象です。
裏面には以下のような注意書きもあり、動作と改修の必要性を結び付けるロジカルな説明が求められます。
※「ふらつくため」「筋力低下のため」「転倒リスクがある」「バランスが悪いため」「不安なため」「掴るところがないため」などの曖昧な表現のみでの記載は避け、なぜそのような状況になっているのかについて、本人の身体の状況、ご自宅の状況などの要因を含め、できるだけ具体的に記載してください。
また、複数事業所からの見積もりを取ることについての説明欄のチェックがあります。ここ数年でこのチェック欄をつける自治体が増えていますね。
横浜市

一気に雰囲気が変わりました。横浜はA4用紙一枚です。
工事箇所の多い住宅改修は結構ぎゅうぎゅうで見にくくなります。
特徴としては、家族や介護サービスの状況などについての記載欄がないことですね。住宅改修が自立支援のための制度だという観点を考えると、介護負担の軽減に関する視点をスパッと切り取るところはわかりやすいですね。
藤沢市


県内有数の観光スポット江の島のある藤沢市です。
まず項目数の多さにのけぞります。
ADLの判定があるというのが特徴的です。他にもいくつかの自治体でこのADL判定を採用しています。とはいえ、介助がどのレベルかといっても、どのように介助されているのか、というのはここに違うので、やはり裏面の記載で具体化していくことが重要になりますね。
裏面は動作でカテゴリを分けるのではなく、工事する場所でカテゴリで分けて8分割しています。なので、個々の枠が狭く、その時の住宅改修で使わない場所の行を削って書き込む感じです。
逗子市

逗子市です。太平洋に面した逗子市、雄大な海原のようなおおらかさを感じます(藤沢市は…?)。
A4一枚。「住宅改修が必要な理由」とだけ言われて大きなスペースを与えられても、逆に、なにをどう書けばいいのか、と迷ってしまう人もいます。
二宮町


こちらも海に面していますが、湘南にある中郡二宮町。
②総合的意見という部分に現状の課題をまとめ、③の部分で場所、工事内容、効果を記載するパターンです。選択やチェック項目などはなく、すべての項目はテキスト記入となっています。
工事箇所が多ければ、2枚目以降の用紙を使うことになっています。
違うのは「書式の見た目」だけではない
7市町の理由書を並べてみると、まず目につくのはレイアウトの違いです。
しかし、実務上もっと重要なのは、書式が違うだけでなく、理由書の中で整理を求められる情報にも違いがあることです。
例えば、ある自治体では文章を中心に身体状況や住宅状況を記載する一方、別の自治体ではADLを細かな動作に分けて確認する書式になっています。
実際に今回確認した書式でも、藤沢市では起居動作、立ち座り、移乗・移動、屋内外の歩行、排泄、入浴など、多数の日常生活動作について現在の状態を整理する欄が設けられています。
一方、横浜市では「被保険者の身体の状況」「住宅の状況及び困難な生活動作」「住宅改修の目的及び効果」という大きな記述欄を中心に構成されています。
つまり、
同じ利用者について、同じ住宅改修を行う場合であっても、提出する自治体によって必要な情報が変わることがある
ということです。
理由書を書くために、市町村の違いによって「何を見るか」「どこをチェックするか」「何を質問するか」が変わる場合もあります。
単純に文章を別のExcelへコピーすれば終わり、とは限りません。
なぜ、全国共通の介護保険なのに理由書が違うのか?
理由は、介護保険制度の仕組みにあります。
住宅改修費は介護保険制度に基づく全国共通の給付ですが、実際に住宅改修費の申請を受け付けるのは、それぞれの市区町村です。
国は住宅改修理由書について標準的な様式を示していますが、それを全国で必ずそのまま使用する仕組みにはしていません。
厚生労働省自身も、市町村が独自の様式を定めることを認めています。
そのため、国の標準様式を比較的そのまま使用している自治体もあれば、地域での住宅改修の確認方法や運用に合わせて項目を追加したり、独自の書式を使用したりしている自治体もあります。
これは必ずしも「どの自治体が正しい」という話ではありません。
それぞれの自治体が、介護保険による住宅改修の必要性を適切に確認するために運用してきた結果ともいえます。
一方で、理由書を作成する側から見ると、別の問題が生まれます。
理由書作成で大変なのは「文章を考えること」だけではない
住宅改修の理由書というと、
「利用者の状態を聞いて、必要な理由を書けばいい」
というイメージを持たれるかもしれません。
しかし実際の理由書作成では、それだけではありません。
まず、介護保険証やケアプランなどから利用者の情報を確認します。
身体状況や疾病、現在の介助状況、生活動線、福祉用具の使用状況などを整理します。
そのうえで、
「何ができないのか」
「なぜ困っているのか」
「住宅のどこに問題があるのか」
「なぜこの工事が必要なのか」
「改修によって何が改善するのか」
を確認します。
そして最後に、提出先となる自治体の書式を確認し、その書式に合わせて入力しなければなりません。
例えば、隣の市の案件を担当しただけでも、いつも使っている理由書とは記入欄や確認項目が違う可能性があります。
必要な情報を探し、整理し、工事との関係を考え、さらに自治体ごとの書式へ落とし込む。
こうした細かな作業の積み重ねが、書類を作成する側にとっては地味に大きな負担となります。
神奈川県の7市町だけでも、これだけ違う
今回比較したのは、全国の自治体のうち、神奈川県内のわずか6市です。
それだけでも、
- 標準様式に近いもの
- 独自の記述欄を設けたもの
- ADLを細かく確認するもの
- 現地確認や専門職の助言まで確認するもの
- 工事に関する情報を理由書内にまとめたもの
など、さまざまな違いがありました。
全国の市区町村まで対象を広げれば、住宅改修に関わる事業者やケアマネジャーが対応する書式の種類はさらに増えます。
そして利用者が住んでいる場所が変わっても、
「その人に本当に必要な住宅改修を考える」
という仕事そのものは変わりません。
それにもかかわらず、提出先が変わるたびに書式を探し、記入方法を確認し、同じ基本情報を転記する。
この部分は、住宅改修の専門性とは少し違うところで発生している事務作業ともいえます。
自治体ごとの理由書作成を、もっと簡単にできないか
介護リフォーム本舗では、こうした住宅改修理由書作成の負担を少しでも軽減できないかと考え、AIを活用した「住宅改修理由書作成支援アプリ」を開発しています。

目指しているのは、単にAIに文章を書かせることではありません。
基本情報やケアプラン、ADL情報、工事の事前写真など、住宅改修の際に使用する資料から必要な情報を整理し、利用者の身体状況や工事内容をもとに理由書の文章案を作成。
さらに、提出する自治体の書式に合わせたExcelへ出力できる仕組みを整えています。
住宅改修理由書で本当に重要なのは、Excelのセルへ文字を入力することではありません。
利用者が現在どのような生活を送り、どの動作に困っていて、住宅をどう改善すればより安全に生活できるのかを考えることです。
自治体ごとの書式探しや転記、文章作成にかかる時間を減らし、自動化。その分を利用者の身体状況や住環境・目標設定を利用者と一緒に考える時間に使えるようにする。
介護リフォーム本舗では、住宅改修の現場で培ってきた経験とAIを組み合わせながら、住宅改修に関わる業務そのものをより便利にしていきたいと考えています。
まとめ
介護保険は全国共通の制度ですが、住宅改修で使用する「住宅改修が必要な理由書」は全国共通ではありません。
国が示しているのは標準的な様式であり、実際には自治体ごとに独自の書式や確認項目が設けられています。
今回、神奈川県内の7市町を比較しただけでも、その違いはかなり大きなものでした。
そして、こうした違いへの対応も、住宅改修理由書作成にかかる「見えにくい手間」の一つです。
国の介護情報基盤・デジタル化にともない、住宅改修に関する書式の統一という話も上がっているようですが、なかなか進む気配を見せていません。今の標準書式が最善とは思いませんが、統一することで、分析などにも活用でき、行政・事業者どちらにも大きなメリットがあるものと思われます。
住宅改修の目的は書類を完成させることではなく、その人が住み慣れた自宅で、より安全に生活できる環境をつくること。
介護リフォーム本舗では、住宅改修そのものはもちろん、その周辺にある業務についても、より良い方法を考えていきます。
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