住宅改修理由書のNG例10選|認められにくい理由と見直し方

住宅改修理由書のNG例10選 住宅改修

介護保険の住宅改修では、手すりの取り付け、段差の解消、扉の取り替えなど、対象となる工事の種類が定められています。

ただし、工事が対象種目に含まれていれば、必ず住宅改修費が支給されるわけではありません。本人の心身状況や生活動作と工事の必要性が結びついていなければ、市区町村から確認や理由書の修正を求められることがあります。

「本人が希望している」「安全のため」「将来に備えるため」といった理由は、一見するともっともらしく見えます。しかし、それだけでは本人が現在困っている動作や、住宅改修によって期待される変化が分かりません。

この記事では、住宅改修が必要な理由書で注意したいNG理由を10例取り上げます。なお、支給の可否は本人の状態や住宅環境、自治体の取扱いによって異なります。ここでいう「NG」とは一律に対象外という意味ではなく、その理由だけでは住宅改修の必要性を説明しにくいという意味です。

住宅改修理由書では「工事」よりも「本人の生活動作」が重要

理由書を作成するときは、最初から「廊下に手すりを付ける」「トイレを引き戸にする」といった工事内容だけを考えないことが大切です。

まず、次の4点を順番に整理します。

  1. 誰が使う場所なのか
  2. 現在、どの生活動作に困っているのか
  3. なぜ、その工事が必要なのか
  4. 改修後、本人の動作や生活がどう変わるのか

例えば「トイレに手すりを付ける」という工事でも、便座から立ち上がれないのか、方向転換時にふらつくのか、ズボンの上げ下ろしで姿勢を保てないのかによって、必要な手すりや改修方針は変わります。

理由書の各項目に何を書くかを確認したい方は、住宅改修が必要な理由書の書き方と記入例も参考にしてください。

理由書NG例1:「本人や家族が希望しているため」

本人や家族の希望を確認することは、住宅改修を考えるうえで欠かせません。しかし、「本人が希望しているから」「家族から頼まれたから」という理由だけでは、介護保険を利用して工事を行う必要性までは説明できません。

つまり、住宅改修工事を行うことで、どのように自立支援につながる効果があるのか、が明確になっていなければ、「工事してほしい」だけでは理由にならないのです。介護保険の財源は税金と保険料から成り立っているものであって、公費を使って住宅改修をする理由が必要なのです。

また、本人と家族の希望が一致しない場合もあります。家族は転倒を心配していても、本人は別の動作に困っているかもしれません。

希望を聞いたあとは、次の点を確認します。

  • 本人はどの動作に困っているのか
  • 現在はどのような方法で動作しているのか
  • 家族は何を見て危険だと感じたのか
  • 改修によって本人ができるようになることは何か

本人の希望にしっかり耳を傾けることは大前提です。しかし、希望=理由ではないため、希望をそのまま理由にするのではなく、希望の背景にある具体的な生活課題を見つけることが重要です。

理由書NG例2:「将来必要になるかもしれないため」

加齢や病状の進行を考えると、早めに手すりや段差解消を用意したいと思うことがあります。しかし、現在は問題なく動作できており、「今後使うかもしれない」という理由だけでは、現時点における住宅改修の必要性を説明しにくくなります。

理由書では、将来の可能性ではなく、現在の心身状況と生活動作を整理します。

例えば「将来の転倒に備えて階段に手すりを付ける」ではなく、階段昇降時に膝折れがある、壁に手をついて身体を支えている、家族の見守りが必要になったなど、現在起きている変化を確認します。

退院予定者の住宅改修など、退院後の生活を想定して事前申請するケースもあります。この場合も、退院する可能性があるではなく、退院することが確定的になっていることが必要です。退院できなかった・実際に一度も使うことができなかった、という場合は住宅改修として認められない場合もあります。判断に迷う場合は事前に市区町村へ確認しましょう。

理由書NG例3:「転倒したときのけがを軽くするため」

転倒による骨折やけがを防ぐことは重要です。しかし、転倒した後の被害を軽減することだけを目的に、クッション性の高い床材へ変更する工事は、住宅改修の理由として、基本的には認められていません。

床材の変更で確認したいのは、本人の移動動作です。

  • 床が滑るため足を踏ん張れない
  • すり足で床材の継ぎ目につまずく
  • 畳の上では歩行器や車いすを操作しにくい

もちろん、要介護認定を受けている高齢者であれば誰しも、転ぶリスクは高くなります。ただ、住宅改修としては「転んでもけがをしにくい床」は対象となりません。段差の解消やすべりの防止など、適切な理由が必要です。本人が転倒せずに移動するため、なぜ床材の変更が必要なのかを整理します。

理由書NG例4:「トイレや浴室内で倒れたときに救助しやすくするため」

トイレや浴室が内開き戸という家も多いと思います。狭い空間の中で倒れた場合、内開きの扉が倒れた本人の体が邪魔になって開かないということもあります。その内開きの開き戸を引き戸や折れ戸へ変更すると、室内で本人が倒れた場合でも外から扉を開けやすくなります。

ただし、「倒れたときに救助しやすくするため」という緊急時対応だけでは、本人の日常生活動作の改善とは結びつきません。あくまで介護保険の住宅改修は自立支援を目的としたものであって、緊急時に倒れたことを想定しての緊急避難を目的としたものではありません。

自治体の住宅改修の担当者とお話しする際にも、実際、このような理由で扉変更を申請される方が非常に多いのだと頭を悩まされていました。

同じ扉の変更でも、次のような状況があれば、住宅改修に適切な理由として本人の動作に基づいて必要性を主張できます。

  • 開き戸を引くときに後方へ身体を避ける際の重心移動で体を支えることができない
  • 疾患の影響から姿勢保持が困難で、後退時にバランスを崩す
  • ドアノブを握ったまま一歩を踏み出せない
  • 歩行器が扉の開閉範囲に入り、扉を操作できない

理由書では、万一の救助ではなく、毎日の扉開閉や出入りで本人が困っている動作を確認します。扉変更の具体例は、住宅改修における扉変更の理由書の書き方でも詳しく紹介しています。

理由書NG例5:「本人が普段使わない場所を改修するため」

介護保険の住宅改修は、本人の日常生活を支援するための制度です。そのため、本人が普段使っていない場所は、改修の必要性を説明しにくくなります。

例えば、本人は1階だけで生活しているのに2階へ手すりを付ける、本人が利用しないトイレを改修する、本人が出入りしない勝手口の段差を解消するといったケースです。

一方、一般的には使わないように見える場所でも、本人が洗濯物を干すために2階へ上がる、ゴミ出しのために勝手口を使うなど、日常生活上必要な動線になっていることがあります。

本人がいつ、何のために使っているのかを確認しましょう。

自治体によっては、2階への階段移動のための手すり設置に関して、「1階にベッドを置くことはできないのか」など、厳しく指摘をする場合もあります。実際の生活状況などを踏まえて適切な理由を記載しましょう。

理由書NG例6:「家族や来客が使いやすくなるため」

住宅改修を行えば、本人だけでなく家族にとっても使いやすい住宅になることがあります。ただし、家族の家事動線や来客の安全、住宅全体の利便性が主な目的では、本人の住宅改修として必要性を説明できません。

例えば、家族が掃除しやすいように扉を変更する、来客も使いやすいようにトイレを広げる、家族が洗濯物を運びやすいように段差をなくす、といった理由です。

理由書を読み返したときに、文章の主語が本人ではなく家族や来客になっていないか確認しましょう。老々介護といった高齢者夫婦の世帯も増えています。それぞれの介護保険認定を使って、必要としている内容を理由書にしていきましょう。

なお、介助者の負担軽減は本人の在宅生活を続けるうえで重要な視点です。単に家族が便利になるという話と、本人への介助を安全に継続するための環境整備は分けて考える必要があります。

また、手すりの設置が必要でありながらも、手すりの設置のために家族が通る動線をふさいでしまう可能性がある場合は跳ね上げ式にすることも認められます。本人のための住宅改修であるのはもちろんですが、家族の生活動線を考慮することも重要です。

理由書NG例7:「古くなった・壊れたため」

手すりが古くなった、扉が重くなった、床材が傷んだといった老朽化や破損への対応は、通常の修繕にあたります。「古くなったから新しくする」という理由だけでは、介護保険住宅改修の必要性を説明できません。

一方、本人の身体状況が変化し、既存の設備では安全に動作できなくなった場合は別です。

例えば、既存手すりの高さが現在の立ち上がり動作に合わない、握力低下によって現在の形状を握れない、身体状況の変化で重い扉を開けられなくなった場合などです。

とても多いのが、「引き戸が重くて開けるのが大変になった」というもので、これが扉の老朽化ですべりが悪くなって開けられなくなったのか、それとも本人の状態像が悪化したことで開けられなくなったのか。この表現の違いで認められるかどうかが大きく変わります。

設備の古さや破損ではなく、本人の変化によって何ができなくなったのかを確認することが必要です。

理由書NG例8:「掃除しやすく衛生的にするため」

汚れにくい床材、掃除しやすい便器、手入れしやすい浴室は、生活を快適にします。しかし、清掃性や衛生管理だけを目的とした改修は、本人の生活動作を支援する住宅改修とは異なります。

床材を変更する場合であれば、掃除のしやすさではなく、滑りやすさ、つまずき、車いすや歩行器の操作などを確認します。便器を交換する場合は、汚れにくさではなく、立ち座り動作や姿勢保持、既存便器の高さとの関係を確認します。

トイレの手すりを福祉用具で利用している場合は確かに床掃除が面倒です。住宅改修で手すりを壁に設置することで掃除が楽になったという声は事実よく聞かれます。

しかし、工事によって家族の清掃負担が軽くなる場合でも、それを理由書の中心にせず、本人の困難動作と改修効果を整理しましょう。

理由書NG例9:「ヒートショックを防ぐため」

浴室の寒さやヒートショックへの対策は、高齢者の安全を考えるうえで重要です。ただし、寒さや健康リスクへの対策だけでは、介護保険住宅改修の対象となる工事と本人の生活動作との関係が分かりません。

もちろん、ヒートショック自体は高齢者にとって大きなリスクです。ただ、住宅改修の目的としては現状不適切というのが現実です。

住宅改修でもユニットバスへの交換をする場合もありますが、住宅改修として認められるのは段差解消や床材変更、手すり設置などの部分となります。ユニットバス交換ではなく、住宅改修としての目的を明確にしておくことが重要です。

理由書NG例10:「趣味や生きがいを楽しむため」

園芸を続けるために庭に出たい、地下にあるピアノを弾くために階段の手すりを付けたい、といった希望や想いは、本人らしい生活を支えるうえで大切です。しかし、理由書に「生きがいづくりのため」とという理由で書いても、なぜ介護保険による住宅改修が必要なのかという指摘が入ります。

これは、日常生活上の必要性と、生きがいという部分で線引きがされてしまうからです。とても残念な部分ですが、これは介護保険の性質上、他のサービス利用等も含めて明確にされています。

ただ、生活上の必要性に結び付くものであれば認められるものもあります。例えば庭へ続く通路が、通院、買い物、ゴミ出しなどの日常的な外出動線でもある場合があります。通院やデイサービスへの外出や社会参加の機会を維持することが、本人の自立した生活と深く関係している場合もあります。

日常生活上の必要性とどう結びつけて考えるかが重要です。

屋外改修と生きがいの考え方については、屋外の介護リフォームと社会参加もご覧ください。

同じ工事でも理由によって判断が変わる

住宅改修の理由書では、工事名だけで必要性を判断することはできません。同じ工事でも、目的と本人の動作によって説明内容が変わります。

工事そのままでは認められにくい理由確認したい本人の生活動作
引き戸への変更倒れたときに救助しやすくしたい扉開閉時にバランスを崩す、歩行器のまま操作できない
床材の変更転倒時のけがを軽くしたい滑る、つまずく、歩行器や車いすを操作しにくい
浴室改修ヒートショックが心配段差を越えられない、浴槽をまたげない、床が滑る
手すりの設置本人や家族が希望している立ち上がりや方向転換時につかまる場所がない

重要なのは、NG表現を別の言葉へ置き換えることではありません。本人の動作を確認せず、文章だけを介護保険らしい表現に変えても、適切な理由書にはなりません。

理由書の作成に迷ったときの確認ポイント

理由書の内容に迷ったときは、本人の実際の動作に戻って確認します。

  • 可能な範囲で本人に動作を行ってもらう
  • どこに手をつき、どのように身体を支えているかを見る
  • どの場面でふらつきや痛みが生じるか確認する
  • 介助者がどのように支えているか確認する
  • 杖、歩行器、入浴用具などの利用状況を確認する
  • 家具の配置変更や福祉用具で対応できないか検討する
  • 改修前後で本人の動作がどう変わるか整理する

住宅改修業者、福祉用具専門相談員、リハビリテーション専門職など、それぞれの視点を持ち寄ることも大切です。自治体によって必要書類や判断が異なる場合があるため、対象になるか迷う工事は着工前に市区町村へ相談しましょう。

理由書作成支援アプリで文章作成の負担を軽減

理由書では、本人の身体状況、介護状況、改善したい動作、工事内容など、多くの情報を整理して文章にする必要があります。「必要性は分かっているけれど、文章にまとめるのに時間がかかる」という方も多いのではないでしょうか。

介護リフォーム本舗では、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員の理由書作成業務を支援するため、住宅改修理由書作成支援アプリを提供しています。

利用者情報や工事内容についての資料のファイルをドラッグアンドドロップするだけで、AIが理由書の文章案を作成します。作成された文章は画面上で確認・修正でき、エクセルで出力できます。

ただし、AIが作成した文章はそのまま提出するのではなく、必ず本人の実際の状態と照らし合わせて確認してください。入力する情報が不足していれば、本人の状況と異なる文章が作成される可能性があります。また、アプリの利用によって住宅改修費の支給が保証されるものではありません。

理由書作成の負担を軽減しながら、本人の生活に合った内容へ仕上げるための支援ツールとしてご活用ください。

まとめ

住宅改修が必要な理由書では、対象となる工事を記載するだけでなく、本人の心身状況、困難な生活動作、改修によって期待される変化を結びつける必要があります。

「本人が希望している」「将来必要になる」「安全のため」といった理由が間違っているわけではありません。しかし、その言葉だけでは、なぜ介護保険による住宅改修が必要なのかが十分に伝わりません。

理由書に迷ったときは、次の4点に戻りましょう。

  1. 誰が使う場所なのか
  2. 現在、どの動作に困っているのか
  3. なぜ、その工事が必要なのか
  4. 改修後、本人の生活がどう変わるのか

本人の実際の動作を確認し、住宅環境と工事内容を結びつけることが、自立支援につながる住宅改修の第一歩です。