住宅改修、2回目ってできるの?限度額内で効率よく介護リフォームを。2回目以降の住宅改修のポイントは?

2回目の住宅改修できる? 住宅改修
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

遠藤 哉

既に一度住宅改修を行ったものの、20万円の限度額を使い切っていない場合。──限度額のみ利用分を賢く活用する方法をご存知ですか?

介護リフォームは、高齢者や介護が必要な方の生活の質を向上させます。しかし、初回の改修では限度額を全て使用しなかった方や、介護度が上がることで新たに発生するニーズに対応するため、追加の改修が必要になることも多々あります。

今回はこのような相談をいただいています。

介護者様
介護者様

去年、介護保険(住宅改修)で階段と廊下に手すりをつけてもらったんですが、最近はお風呂に入るのも大変になっていて、今度はお風呂にも手すりが欲しいと思っているんです。20万円使えるという話は聞いていたんですが、たぶん20万円分全部は使っていないと思うんです。

今度トイレの手すりをつけてもらうときにも介護保険は使えますか?

このように、住宅改修を複数回行う場合もあります。身体状況は時間とともに変化しますし、新たな課題が生まれることも数多くあります。時間とともに筋力や体力が低下するというだけでなく、リハビリや環境の改善により新たなステップとして住宅改修が必要になる場合もあります。

例えば、最初の工事ではお風呂でのシャワーを目的に浴室の出入口や浴室内に手すりを設置したケースがあります。この改修により、浴室への出入りや洗い場でのシャワーの使用が安全にできるようになりました。しかし、状態の改善や本人の要望、サービス利用状況の変化により、自宅の浴槽にも入れるようにする必要が生じることがあります。そんな時、残っている限度額で手すりを追加設置することにより、浴槽への出入りが可能になります。

複数回の住宅改修を行うことはあるのか。介護リフォーム本舗フランチャイズを全国に展開する株式会社ユニバーサルスペース遠藤哉社長に伺いました。

株式会社ユニバーサルスペース<br>遠藤哉社長
株式会社ユニバーサルスペース
遠藤哉社長

私たち、介護リフォーム本舗チェーンで行った過去5年間の介護リフォームのうち、15%がリピート工事となっています(自費工事を含む)。
ご利用者様の身体状況の変化や生活の変化により、新たにリフォームが必要な生活環境上の課題が生まれているということを意味しています。
介護リフォームを複数回することは特別珍しいことではありません。

この記事では、まだ使い切っていない住宅改修費を再利用する方法について詳しく解説します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 2回目の住宅改修を考えている方
  • 前回住宅改修をした業者がどこか、限度額をいくら使ったかわからない方
  • 住宅改修の限度額を残すか残さないかで悩んでいる方

【この記事で解説していること】

  • 住宅改修費20万円の限度額内で複数回の住宅改修が可能
  • 2回目以降の住宅改修で注意すべきポイント
  • 2回目以降の住宅改修についてのよくある質問

前回の住宅改修で20万円の限度額を使い切らなかった場合、2回目の住宅改修が可能

介護保険の住宅改修には限度額20万円の住宅改修費

介護リフォームの営業担当者

介護保険制度では、要支援・要介護認定を受けた方が安全で快適な生活を送るために、20万円分の住宅改修費の支給を受けることができます。この費用は、以下のような転倒予防や移動動作の改善につながる住宅リフォームに利用することができます。

  • 手すりの取り付け:階段や廊下、浴室、トイレなどに手すりを設置して、転倒予防や動作の負担軽減を行います。
  • 段差の解消:室内や玄関・屋外等の段差を解消する工事を行い、つまづきや転倒のリスクを減らします。
  • 滑り止めの床材:浴室や玄関など、滑り防止の床材に変更するなどして事故を防ぎます。
  • 扉の改修:開き戸を引き戸や折れ戸に変更したり、開閉がしやすいドアノブに交換することで、出入りの負担を軽減します。
  • 洋式便器への変更:和式便器を洋式便器に交換し、立ち座りや姿勢保持の負担を軽減します。

住宅改修に使われた20万円すべてが保険者(市町村)から支給されるわけではなく、所得に応じた負担割合が設定され、1割から3割までの自己負担が発生します。つまり、1割負担の方の場合は20万円の1割である2万円は自己負担となり、保険者から最大18万円の支給を受けることができます。
負担割合が3割の場合は自己負担は6万円。保険者から支給される金額は最大14万円となります。

20万円の限度額を超過した分は住宅改修費の支給はありません。超過分はすべて自己負担となります。

これが住宅改修の限度額について基本的な考え方となります。詳細はこちらの記事をご参照ください。

限度額を使い切らなかった場合は2回目の住宅改修が可能

2回目の住宅改修のポイント

20万円の住宅改修費といっても、1度で20万円の限度額全てを使い切る必要はありません。本当に必要な部分でリフォームをしていれば、20万円以下になることも多いと思います。むしろ、身体状況から考えて不要な工事は保険適用として認められませんので、保険者の許可が下りないパターンがあります。必要な部分に必要な工事を。限度額いっぱいまで使い切ろう、という考えはそもそもあまり望ましくありません。

20万円分の限度額を使い切らなかった場合、限度額の残額を2回目の住宅改修で利用することができます。以下のようなパターンも2回目の住宅改修を行う例となります。

住宅改修1回目

10万円の工事(自己負担額1万円=1割負担)

階段・玄関の手すり取付工事

住宅改修2回目

10万円の工事(自己負担額1万円=1割負担)

屋外の手すり取付工事

1回目で室内の階段と玄関に手すりを取り付ける(合計額10万円)。その後、屋外で転倒したことから、屋外にも手すりを設置(合計額10万円)。2回の工事で限度額の20万円分の住宅改修工事を行ったパターンとなります。

このように、2度に分けて住宅改修を行うパターンも数多くあります

もちろん、2回目の工事でも20万円の限度額に達しなかった場合は、残額を3回目の住宅改修で利用することもできます

20万円分の限度額を使っていても、介護度3段階リセットで複数回住宅改修も可能

車いすの高齢者とケアマネジャーが笑顔

たとえば過去に20万円分の限度額を利用した方でも、再び保険適用で住宅改修をできる場合もあります。

3段階リセットといって、最初の住宅改修を行ったときの要介護度から要介護度が3段階上がった場合、限度額がリセットされる仕組みがあります。住宅改修費、限度額20万円の枠がまるまる復活するということです。

要介護度には要支援1・2と要介護1~5までの7段階あります。ただし、要支援2と要介護1の認定は同じ基準とみなされますので、全部で6段階という考え方になります。要支援1の方の3段階リセット適用条件は、要介護3以上になることです。

例えば要支援1の時に手すり取付の工事を行い、翌年、要介護3で車いす全介助になったので、車いすで通れるようにスロープを施行する、というケースなども考えられます。上体に応じて必要な住宅改修を行うというものになります。

住宅改修の3段階リセット

住宅改修の3段階リセットについてはこちらの記事に詳しく解説していますのでご参照ください。

また、3段階リセット以外にも、住所地が変わった場合などは住宅改修費のリセットが適用されます。

2回目以降の住宅改修、注意すべきポイントは

2回目以降の住宅改修をする場合に注意するポイントを紹介します。

1.前回と同じ業者に相談する

初回相談した業者で問題がなければ、前回と同じ業者に相談することをお勧めします

前回と同じ業者に相談すれば、前回の申請情報・図面情報などを保有しているため、書類作成などにかかる時間を大幅に短縮することができます。

2.統一感のあるデザインを意識する

2回目の工事では前回の工事部分との見た目の調和を意識しましょう。
前回取り付けた手すりが薄い色の手すりだったのに、2回目につける手すりは濃い色の手すり、となると見た目の調和が得にくくなります。同じメーカーの同じ部材を採用するなど、統一感を意識して部材選定するといいでしょう。

依頼するのが前回と同じ業者であれば前回発注した情報もあるので、廃番になっていない部材であれば同じものを利用できるでしょう。

3.限度額の残額を確認する

依頼の前に、限度額の残額がどのくらい残っているかを確認しましょう。
限度額の範囲内で金額を収めるのか、超過分(全額自己負担分)が発生しても安全性を重視して工事をするのか、あらかじめイメージしておきましょう。限度額内で納めたい場合は、何を最優先にするかを決めておくといいでしょう。

2回目以降の住宅改修で注意すべきポイントをまとめました。

住宅改修は一度にまとめてお願いする?細かく分けて利用する?

限度額内であれば何度でも住宅改修ができることを確認しました。ここで一つの疑問。

工事はまとめてお願いしないで、その都度、一番必要な部分だけに限定して、細かく分けてお願いした方がいいんじゃないか、と考える方もいます。

介護者
介護者

限度額内で住宅改修が何度でもできるなら、一度に使い切らずに細かく分けて使った方がいいですか?

いえケア編集部
いえケア編集部

それもひとつの考え方ですが、もし必要だと思う部分があればまとめて工事をする方がおすすめです。例えば手すりの部材などもまとめて発注できるので無駄が少なくなります。無駄が少なくなるので、その分部材費も施工費も安く済みます

また、住宅改修の申請手続きなどに時間・手間もかかりますので、必要な部分であればまとめて工事をする方がいいでしょう。

もちろん、介護保険を利用する場合、必要ではない部分に工事をすることはできませんが、大変だな・心配だな・苦痛だなと思う部分があれば一緒に相談してみましょう。

複数階に分けることで発生するコストや時間などを考えると、必要だと考えられる部分で、正当な理由がある部分に関してはまとめて住宅改修をした方がいいでしょう。

住宅改修の基本的な流れはこちらの記事で解説していますのでご参照ください。

2回目以降の住宅改修についてよくある疑問

ここで複数回の住宅改修を行う場合の疑問を紹介します。

Q
住宅改修限度額の残額を調べるにはどうしたらいいの?
A

まずはケアマネジャーさんに相談しましょう。前回申請したときの資料があれば、その金額を教えてもらいましょう。または、住宅改修で前回施工した業者にも確認すればデータを持っているかと思います。
もしわからない、すぐに回答が出ないという場合は、市区町村の窓口に電話で確認しましょう。前回の住宅改修費と残額を教えてもらうことができます。

Q
前回、どこの業者にお願いしたのかわからない
A

ケアマネジャーさんに確認することをお勧めします。前回の工事が別の事業所のケアマネジャーだった場合や、その時の担当は地域包括支援センターだったという場合もあるかと思います。そんなときにも、資料の引き継ぎなどで、どの業者でお願いしたかという情報を持っていることがありますし、不明な場合は確認してもらうことができます。

Q
前回のリフォームに納得がいかなかったら、別の業者に変えてもいいの?
A

業者は別の業者でも構いません。お伝えした通り、前回と同じ業者に依頼することのメリットは多くありますが、介護保険や高齢者の身体機能についての知識が不足している業者などでトラブルになることも少なくありません。前回の反省をもとに、ケアマネジャーと相談して業者選定をしましょう。

Q
前回の工事から介護度が3段階上がっているから限度額20万円が追加されるはず。前回の工事の残額分10万円が残っているので、合わせて30万円分使えますか?
A

結論から言うと使える住宅改修費は20万円分になります。住宅改修費は介護認定区分が3段階上がったらいったんリセットされます。3段階上がったからといって、単純に20万円が上乗せされるわけではなく、「リセット」になるので、残額分の繰り越しはできません

まとめ

2回目以降の住宅改修について解説しました。

ひとりの対象者に住宅改修を複数回行うことがあります。在宅介護は期間が長くなることも多く、身体状況の変化に応じて住環境の課題が新たに発生することもあります。安全な移動・動作ができるように、必要に応じて生活環境を整えていきましょう。

また、住宅改修費の20万円限度額を使い切った場合には以下のような選択肢があります。

  • 全額自費で工事する
  • 福祉用具レンタルや特定福祉用具など工事以外の方法で対応する
  • 住宅改修以外の助成金や補助金が使えるか検討する

以上のような選択肢がありますので、ケアマネジャーと相談して最善の方法を検討しましょう。

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

遠藤 哉

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
資格:一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

大手ハウスメーカーを経て、2009年に株式会社ユニバーサルスペースを創業。介護リフォームに特化し、「介護リフォーム本舗」として全国100店舗超を展開している。チェーン全体での介護リフォームの累積工事件数は約120,000件を超える。